「中国差別動画」で締め出されたドルチェ&ガッバーナの哀しき未来

売上の3割以上が吹っ飛ぶ可能性
長沢 伸也 プロフィール

少し以前のデータになるが、最新の地域別の売上が分かっている2016年3月期のドルチェ&ガッバーナの通期業績は、売上高12億9600万ユーロ(約1711億5000万円)。そのうち、イタリア24%、その他の欧州27%、米州13%、日本6%であった(Business Insider Italiaの情報による)。ここまでで計70%ということは、中国を含むアジアや他地域が最大で30%。おそらく中国での売上は20%強程度であろう。

ただし、これはあくまで「国・地域別の売上」であり、購入者の国籍別ではないことに注意が必要だ。例えば中国人がイタリアや日本へ旅行して買った場合は、中国ではなくイタリアや日本の売上に算入される。イタリアでの売上が突出して大きいのは、イタリア人が母国のブランドとして買うのはもちろんであるが、他国から来た客がイタリアを代表するブランドとして購入するためもある。

残念ながら購入者の国籍別データまでは存在しないものの、他のブランドの例から考えると、これは推測ではあるが、中国人のユーザーの割合は最大で40%近くにのぼると思われる。

ドルチェ&ガッバーナの売上は、2017年3月期も前年とほぼ同じ13億ユーロ(約1708億4900万円)だったので、その2〜4割にあたる1年あたり2.6億ユーロ(約340億円)から5.2億ユーロ(約680億円)ほどの額が、今回の炎上事件でドルチェ&ガッバーナが被る損失という計算になる。同社の売上規模を考えれば、決して少なくない額である。

そもそも炎上の発端となった動画は、上海でのファッションショーの宣伝用に制作されたものであった。このイベントの狙いは中国市場での存在感を高め、売上をさらに伸ばす意図であったはずなのに、これが逆に多額の損失と中国市場の消失危機、ブランドイメージの毀損を招く誤算となってしまった。

 

もちろん、筆者の計算には仮定も多い。今回の炎上がどのくらいの数の中国人に波及するのか、いつまで尾を引くのか(いずれも何ともいえない)、同じく箸を使うわれわれ日本や韓国といった国々にまで不買運動は広がるのか(おそらくノー)、中国での同社のビジネスが直営店中心か、卸売中心か(おそらく後者)といった要因で数字は大きく変わる。

炎上が起きたのが、中国の小売業界で1日の売上が最高となる11月11日「独身の日」を過ぎてからだったのは、ドルチェ&ガッバーナにとっては不幸中の幸いだった。今後の焦点は、年が明けて2月の春節まで不買運動が続くかどうかになる。

白いTシャツの男性がガッバーナ氏(Photo by gettyimages)

あの大物も「差別発言」でクビに

ドルチェ&ガッバーナが「差別」のかどで批判を受けるのは、これが初めてではない。過去にも香港店で、地元香港の住民がショーウインドウを撮影するのを警備員が止めた一方、中国本土からの客が撮影するのは止めなかったとして騒動になっている。しかし、今回はブランドの創設者にしてトップであるステファノ・ガッバーナ氏自身が深く関与しており、警備員が起こした不祥事とは次元が違う。

世界的なブランドの「象徴的人物」が起こしたスキャンダルとして思い出されるのが、2011年2月、当時「クリスチャン ディオール」のチーフデザイナーを務めていたジョン・ガリアーノ氏の事例である。