めでたい新年早々に、がっかりな事態に遭遇してしまったた立命館大学の面々。その理由を解き明かす「ネットワークコーディング」を研究する先輩と先生に、「これってどうにかならないの?」と聞いてみた!
【登場人物】
北川さんと有本さん:情報理工学部3回生
吉田さん:修士課程でネットワークコーディングを研究する大学院生
早川さん:吉田さんと同じ研究室の4回生
野口先生:情報理工学部の野口拓准教授
(立命館大学理系スペシャルサイト「TANQ」より転載)
「あけおめ」メールが送れない!
(大晦日の23時59分、某神社にて)
有本:……3、2、1、あけましておめでとう!
北川:さっそく、あけおめメール、送ろうぜ! おれ、早川さんに送っとくし! 吉田さんにはお前から、よろしく!
有本:OK!

(それぞれメールを送信……)
北川:よし、これでOK!
有本:先輩たちにはいつも世話になってるし、正月くらい、ちゃんと挨拶せなな。
北川:あれ、なんだ、送れない。エラーだって。
有本:あ、おれもや……。混んでんのか?
北川:こういう時に限って……。そうだ、早川さんと吉田さん、こういう研究してなかったっけ?
「あけおめメール、送りましたよ!」って伝えがてら、何で送れなかったのか、聞きに行こう!
有本:よっしゃ!
(そして数日後、二人は研究室へ。論文の追い込みで忙しい吉田さん、早川さんは熱心に作業中です)
有本:早川さん~! 吉田さん~! あけましておめでとうございます! じつは、年が替わってすぐに僕たち、お二人に「あけおめ」メールを出したんですが、エラーが出て送れなかったんです。
北川:で、なぜ送れなかったのか知りたくて、教えてもらいにきたんです。
吉田:そういうことか。まさに僕たちは、その問題を解決できる方法について研究をしているんだよ。「ネットワークコーディング」っていうんだけど……。
有本:ネットワークコーディング!? それ、なんすか?
早川:メールが送れなかったのは、年明けにたくさんの人が一気にメールを送信したからだと考えられますね。ネットワークが一度に通信できる情報の量には限りがあるんです。その辺を理解してもらうために、まずは通信の仕組みから説明しましょうか。
一度に送れる情報は一つだけ!
図1のように、X、Yの二人が携帯電話によって互いにメールをやり取りする場合を考えてください。
X、Yがそれぞれ相手に「あけおめ」とメールを送ると、それらが基地局に届きます(①、②)。そして基地局に届いたメールが、それぞれY、Xへと転送されて、相手に届くことになります(③、④)。

ここでのポイントは、同時に送ったように見えても常に微妙な時間差があり、早く送られたものから順に一つずつ流れるという点です。