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あまりにも危うい「外国人労働者の急拡大」…目先の利益が国を滅ぼす

問題点は尽きない

急速な政策転換

外国人労働者の拡大を目指す動きが大きな関心を集めている。

安倍晋三首相が第197回臨時国会の所信表明演説で明らかにして以来、賛否両論の議論を生んでいる。11月13日には国会で出入国管理及び難民認定法(入管法)等の改正案の審議が始まり、わずか2週間後の27日に衆議院を通過した。

政策の方向性はすでに6月の経済財政諮問会議、7月の外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議で示されていた。水面下で準備されてきた政策だが、法制化の動きが明るみになって以降、国内で活発な議論が沸き起こった。

周知のとおり、国会で審議中の入管法改正案は、これまで公には認めていなかった非熟練の外国人労働者の拡大を目指すものだ。2019年度からの5年間で最大34~35万人の導入が想定され、14の業種が検討対象となっている。「出入国在留管理庁」の新設も予定されている。

改正法が成立すれば、来年4月には2つの新たな在留資格が設けられる。一つは在留期間を最長5年とする「特定技能1号」、もう一つは在留期間が更新でき、家族の帯同も可能な「特定技能2号」である。

ただ、この法案に対して示された疑念や反発は小さくない。特に保守層を中心とした多くの政権支持者が困惑をもって受け止めているのではなかろうか。

安倍政権が進める外国人労働者政策は、経済合理性、既存の政策との整合性、さらには歴史と文化の維持といった点において数々の問題を含んでいる。

特に長期的に国家や社会の骨格を変えてしまう危険性は無視できない。ヨーロッパの状況を直視したなら、「国家の溶解」というシナリオも頭をよぎる。決して誇張ではない。それほどのインパクトをもつ政策なのである。

 

外国人労働者の導入がもたらす不利益

今回の政策転換の背景には人手不足があるとされるが、経済界や支持団体、地方組織からの要請を受けた決定と見て良いだろう。

保守政党とされる自民党だが、支持基盤に着目すれば「経営者政党」の顔もある。働き方改革のように労働者寄りの政策を打ち出すことも少なくないが、今回の件に関しては業界寄りの姿勢が鮮明だ。

たしかに一部の業種では、外国人労働者なしには現場が立ち行かなくなっている。日本人が敬遠する業種では特にそうだ。

安倍政権が目指す外国人労働者の拡大にも利点はある。企業の安定した経済活動、ひいては国内総生産の維持が可能となるのは確かだろう。

だが、この政策に伴う副作用は大きい。外国人労働者に依存し始めている現状は安易に拡大すべきではない。政府が示した方針に本当に経済的な合理性と持続可能性があるかは慎重に考える必要がある。