殴りかかられて…81歳・認知症の父に運転をやめさせる手段探しの道

運転免許に固執する父との奮闘記:前編
田中 亜紀子 プロフィール

心の支えの神経内科で絶望

2017年7月、神経内科を受診。妹の夫が医師とのやり取りを録音してくれた。私は父の現状をまとめ、一刻も早く運転をやめさせてほしい旨を書いた医師向けの手紙を妹の夫に託していた。診断結果はやはり立派な認知症である。辛い気持ちもあったが、同時にはっきり分かったことに安心もした。しかし次の医師の言葉に耳を疑った。「私に権限はありませんが、車の運転はおやめになったほうがいいと思います」と軽く言ったのだ。

「権限がない」を、最初に言ったら、「言うことを聞かなくてもいい」と思ってしまうではないか。案の定「自分が一番わかってますので、運転はやめません」との父の返答で会話は終わっていた。

医者にさえ行けばと期待していただけに失望は大きかった。認知症と診断されたその日に、父は車で出かけていく。「認知症なんだから運転はやめて」と言っても、「先生に、私は運転をやめないと言っただろ」とかえって言い訳を与えてしまったようだ。

次の診察には私が付き添い、説得を懇願したが、その若い女医は「権限がない」「他にやめさせる方法もない」を繰り返すだけ。その後、認知症を理由に介護認定を申請し、訪れた役所から派遣された調査員と地域包括センターの担当者にも相談したが、「説得はしますが、我々にはやめさせる権限はないんです」とだけ。当然ながら、父の自主性に任せる説得に、父は自主的に応じなかった。

 

いったいどこに権限があるのか

それならどこなら権限があるのだろう。役所関連の二人は「市役所も警察も話は聞くでしょうがやはり自主的な返納をすすめられるでしょう」と言っていた。

家族もだめ、医者もだめ。役所の介護担当者もだめ。一般の警察もだめらしい。では、どうやったらやめさせられるのか? 困り果て、他の人はどのように運転をやめさせたのかを、ネットで検索してみる。

家族総出で話し合い、解決したまぶしい話。何とか自主返納させたものの、後悔した本人が毎日免許交付所に通い、返してくれと言い続けている。説得できなかったら「車の鍵を川か海に捨てよう」、「車を破壊してしまおう」等々途方に暮れる情報の中で、有益と感じられた情報に出会えた。それは警察の運転免許センターが高齢者の運転に関する相談に乗ってくれるというものだ。