老いた父、母に「やってほしくない手術」を医者が勧めてきた場合…

どうやって判断すればいいのか
週刊現代 プロフィール

これで医者も納得する

「本人の意思であることをきちんと伝えたことで、医者も納得してくれました。現在、父は軽い抗がん剤と痛み止めで、余生を過ごしています。

余命は1年と言われましたが、がん発覚からもうすぐ2年が経ちます。結果的に本人も私たちも手術を断ってよかったと思っています」(太田さん)

たとえ、医師が手術に耐えられると判断しても、実際、術後どうなるかはだれもわからない。それでも、医者に勧められ、高齢の親が「手術を受けたい」と主張した場合、家族はどうすればいいのか。

 

都立駒込病院名誉院長の森武生氏が語る。

「高齢者の手術は、全身状態で手術の可否を判断すべきと言いますが、本人の強い意思と周囲のサポート環境、経済状況なども含めて見ることが『全身状態』の本当の意味合いだと思います。

患者にとってどんな医療が幸せか、患者目線で理解しようとする姿勢が医師には求められています。

そのためにも患者さんやその家族は、面倒臭がらずとにかく疑問に思ったことは医師と話すこと。

そうしないと、必要以上に怖がって、治療を受けなかったり、逆に勧められるまま手術したりして、結果的に不幸せになってしまう。医師と患者、その家族が信頼関係を築くことが一番大事です」

順天堂大学医学部病理・腫瘍学教授の樋野興夫氏もこう語る。

「高齢者の場合、術後のリハビリを乗り越えられるかが、手術するか否かの大きなカギになります。では術後、だれが親の面倒を見るのか。子供が親と離れて住んでいる場合、物理的に難しいケースも出てきます。

術後のサポートが難しい場合は、それを率直に医師に相談するべきです。高齢者の手術は、本人の意思も大切ですが、それを支える家族の状況も同じくらい大切です」

自分たちが置かれている状況を丁寧に伝えれば、医師も無理に手術をしようとはしない。術後のケアに自信がないことを伝え、医師も一緒になって親に「手術をやめるよう」説得してもらえば、結果的にみなが納得して手術を断ることができる。

特に80歳を過ぎれば、自分一人で判断することが難しくなり、医者の言う通りにしがちだ。それを冷静な目で判断できるのは家族しかない。

「週刊現代」2018年11月24日号より