同じ病気でも何種類もの薬を出されたり、違う病院に行ったらまったく別の薬を処方される。そんな経験をした人も多いのではないか。たとえば高血圧の薬である降圧剤。代表的なものだけで7種類の経口薬がある。
「降圧剤にはガイドラインがあり、基本的にはそれに基づいて処方されます。しかし、治療が進んでいけば、それぞれの医師の裁量で判断していくことになる。
患者さんの年齢や健康状態を鑑みて処方している医師もいれば、とにかく血圧を下げたほうがいいという考え方の医師もいます」(「茅ヶ崎メディカルクリニック」院長の柘植俊直医師)
現在、最も処方されているのが『ARB』。商品名はアジルバ(アジルサルタン=一般名、以下同)、ミカルディス(テルミサルタン)など。
これは血圧を上げる作用がある『アンジオテンシンⅡ』という物質が、受容体に結合するのを妨げる。その働きで血圧を下げている。
ARBは比較的新しい降圧剤だが、薬価が高い。しかし、これまで使われてきた『ACE阻害薬』に比べ、降圧効果で優位性があるというデータはない。価格が高く、製薬会社にとってメリットが大きいというのが、広まった理由の一つとされる。
このACE阻害薬には、コバシル(ペリンドプリルエルブミン)、セタプリル(アラセプリル)などがある。
前出の『アンジオテンシンⅡ』を生み出す『アンジオテンシン変換酵素(ACE)』という物質の働きを阻害する薬だ。空咳が出るなどの副作用があり、気管支系が弱い人には向いていない。
ノルバスク(アムロジピンベシル酸塩)、カルブロック(アゼルニジピン)。これらは、欧米で第一選択薬として使われている『カルシウム拮抗剤』の一種。
細胞内にカルシウムイオンが流れ込む際、心臓や血管が収縮する。それを抑えることで血管を拡張し、血圧を低下させる薬だ。
「昔から使用されている降圧剤なので、医師の多くが使用経験が長く『このぐらい処方すると、この程度血圧が下がる』と、把握している薬です。170、180など、早急に血圧を下げる必要がある患者さんなどに向いています」(前出・柘植氏)
カルシウム拮抗剤と並んで多くの医師が勧めるのが『利尿剤』。代表的な商品はフルイトラン(トリクロルメチアジド)、ラシックス(フロセミド)など。
血液中の水分量が増えると、血管を圧迫し血圧は上がる。そのため、尿をどんどん出すことで、水分を体外に排出し、血圧を下げるという薬。
基本的には副作用は少ないが、特に夏場など高齢者は脱水症状を起こすことがあるので注意が必要だ。
夏場と違って、これからの季節は、血管が収縮し、血圧が上がりやすい。それぞれの時期に応じて、薬の種類や量を調節すべきだろう。