がんで膀胱全摘…小倉智昭アナウンサーの選択を考える

他に手はなかったのか 
週刊現代 プロフィール

つらい人工膀胱

さて、膀胱を全摘出するにあたり、小倉氏には、がんの進行度合いにもよるが、二つの選択肢が提示されることになる。膀胱の代わりにストーマ(人工膀胱)を体の外に造設するか、体内に代用膀胱を取りつけるかだ。それぞれについて見てみよう。

ストーマの場合、ヘソの横に穴を開け、そこから尿管につなげた小腸の一部を引き出し、皮膚に縫いつけて尿を排出する出口(ストーマ)を作る。そこに尿を受け止める袋(パウチ)を取り付ける。尿意はなく、ストーマから断続的に排尿され、

200~300mlたまったところでトイレに流す。歴史のある確立した手術方法で、比較的安全だ。しかし、腸管が腹部から出ているため、外観上、抵抗感のある人も多いだろう。

「公衆浴場や温泉に行きづらいですよね。また水泳をはじめ、水に入るようなスポーツも難しい。濡れると貼ってあるパウチが取れてしまうことがあります」(前出・新村氏)

 

また装着するパウチの交換を週に2回ほど行う必要があり、時間は30~40分かかる。

「パウチを接着剤で皮膚に貼り付けるので、かぶれることもあります」(前出・永井氏)

一方、代用膀胱は小腸あるいは大腸を60cmほど切り離して、尿をためる袋をつくり、これを尿管と尿道につなぐ。

代用膀胱は体内に設置するため、外観上は術前と変わりなく、これまで通り尿道より排尿が可能だ。一見、ストーマよりいい気もするが、代用膀胱にも様々な苦労がある。

「排尿にコツがいります。代用膀胱には、自ら収縮して尿を排泄する機能がないため、腹圧をかけて排尿しなければならないのです。

そのため、うまくできないと尿が漏れてしまったり、逆にうまく出せずに、尿が尿管を逆流し、腎臓に細菌が入って熱が出たりします」(前出・新村氏)

手術後1~3ヵ月は排尿のトレーニングが必要となる。

また、代用膀胱もストーマ同様、尿意を感じることがないため、時間を決めて、排尿する必要がある。

「排尿の回数は摂る水分量にもよりますが、多い人だと、一日に10回以上トイレに行かなければいけません。また寝ている間にたまる尿を朝までためておくほどの大きな膀胱はつくれないため、睡眠後にも1~2回は排尿する必要があります」(昭和大学藤が丘病院副院長・佐々木春明氏)

腸管を利用する手術なので、術後に腸閉塞を起こす可能性もある。そのため、食べ物にも気をつけなければならない。

「繊維分の多い食べ物、例えば芋や根菜を摂ると、腸管の動きが悪くなる場合があり、注意が必要です」(前出・永井氏)

どちらの手術を選択するにしろ、待ち構えているのが性生活の問題だ。

「ペニスそのものは温存できますが、がんの進行度によっては神経をとらなければならないことがある。そうなると勃起は不可能になります」(前出・佐々木氏)

ストーマにしろ、代用膀胱にしろ、待っているのはいばらの道。しかし、がんを抱えながらもスタジオに立ち続けた氏なら、そんな苦労も克服するだろう。再び「小倉節」でお茶の間を沸かせてくれるに違いない。

「週刊現代」2018年11月24日号より