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がんで膀胱全摘…小倉智昭アナウンサーの選択を考える

他に手はなかったのか 

内視鏡で取りきれなかった

「さて、私ごとで申し訳ないんですが、お時間をちょっと頂戴いたします」

11月5日放送の『とくダネ!』でこう神妙な面持ちで切り出した小倉智昭氏(71歳)の姿にお茶の間のファンもびっくりしたことだろう。

2年半前に膀胱がんを患い、内視鏡手術を受けた小倉氏。放送日のスポーツ紙の朝刊では、その膀胱がんが再発しているか調べるために検査入院をするのではないかと報じられていた。しかし、小倉氏の口から語られたのはさらに深刻な事態だった。

「膀胱がんがあるかないかは細胞診で尿を調べればわかります。内視鏡を入れれば、すぐわかることなんですが、私の体には膀胱がんがあります。ずっと前からあるんです」

'16年に膀胱がんが見つかり、内視鏡手術をした時に、筋肉層まで入り込んで取りきれなかった腫瘍があり、以来ずっとがんを抱え続けていたというのだ。筋肉層まで浸潤した膀胱がんの手術は難しいと語るのはときわ会常磐病院院長の新村浩明氏だ。

「内視鏡で筋肉層まで削ってしまうと、膀胱に穴が開いて、尿が外に漏れてしまいます。それを防ぐために適切な深さで切除を中止することになります。したがって、小倉さんのように『取りきれない』ということになるのです」

 

そもそも膀胱がんとはどのような病気なのか。川崎医科大学泌尿器科学教授の永井敦氏が説明する。

「膀胱の内側を覆っている尿路上皮という粘膜ががん化することによって引き起こされます。痛みはありませんが、一見して血液が混じっているとわかる尿が出るのが一般的な初発症状です」

根の浅いがんであれば内視鏡手術だけで取り除くことが可能だが、小倉氏のように筋肉層までがんが浸潤してしまった場合、本来であれば膀胱を全摘出するしかない。

では、なぜ小倉氏は術後2年半もがんを放置することになったのか。小倉氏は番組で自らこう語っている。

「当時からお医者様には『(膀胱を)全摘しないと完治できませんよ』と言われていたんです。ただ、どうしても僕は膀胱を温存したくて、様々な免疫療法とかいろんな治療をしてきて……」

膀胱を全摘出すれば、尿意を自分でコントロールできず、何度もトイレへ駆け込むことになる。人前に立つキャスターゆえ、人工膀胱に煩わされることなく、仕事を続けたいという思いがあったのかもしれない。しかし、これは危険な選択だった。

過去には俳優の故・菅原文太氏も膀胱がんを患い、役者としてなるべく膀胱は取りたくないと、放射線治療や抗がん剤治療を受けていた。だがその後、がんは肝臓に転移し、結果的に死期を早めることになってしまった。

しかし、小倉氏は幸い今のところ、転移はなく、医師にも「奇跡としか思えない」と言われたと語っている。

転移がなかったとはいえ、がんは小倉氏の体を徐々に蝕んでいった。今年の10月には膀胱炎を併発し、20日間、出血が止まらなかったという。もはや一刻の猶予も許さない状況。

そこで、ついに、命と引き換えに膀胱を全摘出することを決断したのだ。手術は11月下旬の予定だ。