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年末年始、お風呂が危ない…!誤嚥性肺炎と脳溢血で死なないために

本当に、多いんです

インフルエンザが原因に

寒さが厳しくなる年末年始。これからの季節、二つの恐ろしい病気が高齢者に忍び寄る。その一つが「誤嚥性肺炎」だ。

「誤嚥性肺炎は夜間、睡眠中に、口腔内の雑菌が入った唾液が気管の中に垂れ落ちて起きます。昼間なら気管に入れば咳をして出すのですが、眠っているので咳をしない。

症状が現れないので不顕性誤嚥と言うのですが、これによって起きるのが誤嚥性肺炎です」(「長尾クリニック」院長の長尾和宏医師)

誤嚥というと、食べ物がのどにつまったり、胃からの逆流物が気道に入ることで起きるというイメージを持っている人もいるだろう。だが、誤嚥性肺炎はむしろ夜間、寝ている間に静かに進行することが多い。

東京医科大学八王子医療センター呼吸器内科教授の寺本信嗣医師は患者にいつも、「誤嚥性肺炎は夜作られる」と話しているという。

「内因性の肺炎なので、鼻腔や咽頭にもともとある定着菌が、気道に落ち込んでいく。あるいは、気道にいる菌が誤嚥を契機に活性化するという二つの仕組みがあります。一番多いのは、保菌していた肺炎球菌によるものです。

私の研究によれば65歳以上の高齢者は、夜間眠っているときに、ほとんど全員が誤嚥をしています」

厚労省が発表している「人口動態統計」('17年度版)によれば、誤嚥性肺炎は日本人の死因の第7位。さらに同5位は「肺炎」だ。この中にも相当数の「隠れ誤嚥性肺炎」が入っていると考えられる。非常に死亡者数の多い病気なのだ。

食べ物がのどに詰まる、むせるといった「摂食誤嚥」で直接肺炎になるわけではないが、無関係ではない。

「一度食べ物を誤嚥したからといって誤嚥性肺炎になるわけではありません。ただ、摂食誤嚥がある人は誤嚥性肺炎になるリスクは高い。長

年にわたって何度も摂食誤嚥を繰り返しているうちに、肺炎になるリスクが高まっていく。本人も気づいていないし、周りもわからないことが多い。食事中によくむせてしまうような人は要注意です」(寺本氏)

 

特にこれからの季節は、誤嚥性肺炎のリスクがさらに高まる。

「誤嚥性肺炎が一番多いのは冬であることは間違いありません。とりわけ悪影響が大きいのがインフルエンザ。

インフルエンザで全身が消耗、弛緩していると嚥下機能が非常に低下します。インフルエンザにかかっている最中に誤嚥を繰り返し、症状が収まったと思ったら、今度は誤嚥性肺炎になるというパターンが多いのです」(寺本氏)

またある種の薬を服用しているとリスクが高まる。例えば意識レベルが低下する薬(風邪薬、睡眠薬、抗うつ薬など)は、嚥下機能に悪影響を及ぼすと言われている。

寒い時期、何気なく服用した風邪薬が死に至る病を引き起こすこともある。

厄介なのは誤嚥性肺炎が、普通の肺炎に比べて症状が出にくいことだ。

「非常にわかりにくいのが特徴です。微熱は出ますが、本人が自覚できないレベルです。

元気がない、食欲がないというのが二大症状なので、家族の場合『おじいちゃんちょっと元気がないね』ですまされてしまう。そして様子をみようと寝かされているうちに、重篤な肺炎になっていく。

一番わかりやすいのは食欲がなくなって、食事をとらなくなること。3日食べなかったらおかしいと思って受診することです」(寺本氏)

誤嚥性肺炎にならないためには、嚥下機能が衰えないようにのどを鍛えることが重要だと言われている。同時に、雑菌を減らすための歯磨きなどの口腔ケアも同じぐらい重要視されている。しかし、それでは不十分だという。寺本氏が話す。

「実は口腔ケアでは、雑菌は半分程度にしか減らないことがわかっています。誤嚥性肺炎を防ぐためには、鼻腔も重要です。長年にわたって鼻炎を放置して、そこに定着菌を持っている人は、誤嚥性肺炎の大きなリスクになり得るのです」

たかが鼻炎と軽く考えずに治療すべきだ。高齢者にとって肺炎は死に至る病。早期に発見して、治療を受けるか否かが生死を分ける。