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日英米でしか使われていない、数学の「ローカル・ルール」驚きのワケ

世界共通だと思っていたのに…

数学者同士のケンカが原因

あまり知られてはいないことだが、日本は世界有数の「数学大国」だ。

数学のノーベル賞ともいわれるフィールズ賞を、日本人は3人も受賞している。国別での受賞者数では、イギリスに次いで5位だ。

江戸時代には、『塵劫記』という数学書が全国で大ヒット。空前の数学ブームが起きたという。この時期、日本固有の数学である「和算」も発展し、「和算家」とよばれる学者が活躍していた。

 

和算家・毛利重能が著した『割算書』には、「割算天下一」という記述がある。これは、「割り算に関しては日本一」という自負の表れ。こう言ってしまうほど、計算式の中でも割り算が難しいと考えられていたのだろう。

割り算といえば、「÷」が世界共通の記号と考える人は多いが、実は日英米の3ヵ国しか使われていない。これは、ある歴史上の偉人2人のケンカが背景にある。

その2人とは、イギリスのニュートンとドイツの数学者ライプニッツだ。

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さかのぼること350年前、数学界で「微分積分法」が発明された。そのとき、両名が「自分こそが発明者だ」と主張したのだ。この論争は泥仕合を繰り広げ、ニュートン派とライプニッツ派、さらにはイギリスと大陸側との闘いにまで発展した。

当時、イギリスの数学界では割り算に「÷」を使っており、大陸側の数学界では「/(スラッシュ)」などを使っていた。この論争が収まらなかったため、今でも国によって数学記号が違う。たとえば、ドイツでは「:(コロン)」が使われている。

イギリス移民が開拓して誕生したアメリカでは、「÷」が使われた。しかし、なぜ遠く離れた日本でもこの記号が使われるようになったのか。

それは、微分積分の論争が巻き起こっていた頃、日本は鎖国しており、そういった情報が入ってこなかったから。開国してから、主な貿易相手であった英米の数学記号が使われるようになったのだ。

今では当たり前のように使っている割り算の記号には、数学者たちの仲まで割ってしまった歴史があった。(介)

『週刊現代』2018年12月8日号より