健康そのものだった52歳ライターが、心臓発作で死にかけた話

完全に他人事と思っていたら…
上阪 徹 プロフィール

オートロックを誰が開ける?

だが、朝だったことが、私には幸運だった。たまたま妻が家にいてくれたからだ。心臓発作をめぐる、もうひとつの盲点がここにあった。仮になんとか私自身が救急車を呼べたとしても、玄関の鍵が閉まっていたら、救急隊員はどうやって部屋の中に入ってきたか。

しかも私が住んでいるのは、オートロックのついたマンションである。インターフォンでの開錠操作が必要になる。先にも書いたように、私は苦しみが増し、ほとんど意識が朦朧とし、誰が来たのかもわからない状態だった。これでは玄関の鍵も、オートロックも自分では開けられなかっただろう。

実際には消防車も来ていて、さまざまな方法が検討されることもあり得ると後に知るのだが(例えば鍵を壊す、窓を破壊するなど。もちろん最終手段だとは思うが)、それには時間も手間もかかるし、開かない可能性だってある。私が思い出したのは、異変が起きて間もない頃は、水を飲みに洗面所に行けるほどだった、ということである。だが、わずか5、6分で身動きが取れなくなっている。

 

だから、もし一人で部屋にいて異変を察知したら、まずは玄関の鍵を早めに開けておく、ということが大事になるのだ。そうすることで、救急隊員は家に入れる。マンションのオートロックについては、インターフォンの前で頑張るか、こういう緊急の場合にどうすればいいのか、管理会社なりに確認をしておいたほうがいい。

マンションによっては緊急事態を知らせるボタンが、室内に付いている場合もある。戸建てなら、契約しているセキュリティ会社が対応してくれる場合もあるかもしれない。いずれにしても、一人で倒れた場合、どうしなければいけないか、事前に調べて家族で共有しておいたほうがいい。それは、万が一のときに、家族の命を救うことにもつながる。

「緊急」「致死性」の文字

救急隊員に酸素マスクをつけてもらって、苦しみは少しやわらいだ。2〜3人がかりでかつがれ、エレベーターで運ばれ、タンカに乗せられると救急車へと向かった。意識はあったが、目を開ける力はもはやなかった。車内でも、大きな酸素マスクをつけていたので、問いかけられてもほとんど応えられなかった。

救急車を呼ぶとき、胸が苦しいことを伝えてあったからか、救急隊員はすでに最適な病院を探し、手配をしてくれていた。これがまた幸運だったのだが、有名な循環器専門病院が比較的近くにあった。

病院に到着したが、目はつむったまま。ストレッチャーで運ばれ、医師はじめ大勢の人たちが慌ただしく動いていることを気配で感じた。医師の質問には、ほとんど応えられなかったと思う。だが、彼らはこの手の発作対応のプロ。やがてパジャマを脱がされると手術着に着替えさせられ、身体に点滴やらいろいろなものを取り付けられた。

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この時点で「大変、危険な状態です」という話が妻にはあったようだ。治療説明書の医師のメモには、「緊急」「急性」「致死性」といった言葉が書かれている。心筋梗塞であれば、こんな治療が行われる、という説明も行われたという。