ゴーン事件、新聞各紙を読み比べると見えてきた「問題の核心」

ポイントは最初の3日間に詰まっていた
プチ 鹿島 プロフィール

官邸案件?「米にお歳暮」説

新聞の見立てはこれで終わらなかった。東京新聞の「こちら特報部」の記事も読ませた。

『ゴーン氏逮捕 なぜ今』(11月22日)。産経抄が「なぜ今」と書いた同じ日に東京新聞も同じテーマできた。

ここにはいくつかの見立てが書いてあった。

すでに各所でも言われている「社内クーデター説」や「司法取引、国民にアピール説」もある。私が目を奪われたのは次の説だ。

『官邸案件?仏と犬猿 米に「お歳暮」』。

どういうことか?

 

世界的な自動車メーカーのトップの逮捕は、影響も大きい。「東京地検の一存で捜査を進められるのか。」と東京新聞は書き、

《国際的な問題も含み、政府も関心がある事案だ。(逮捕した)十九日に検察が法務省を通じて官邸に連絡することはありうる》

との識者のコメントを載せる。そしてこう書くのだ。

《「官邸案件」だとしたらその先にあるのは何か。》

・・・・官邸案件?

急に読む側の胸がザワザワし始めてきた。

《それはフランスとは犬猿の仲とされ、貿易摩擦を繰り返す米国のトランプ氏だ。ゴーン氏の日産からの追放は、ルノーの弱体化を歓迎するトランプ氏に対し、日本からの「お歳暮」のようなものではないか。》

マクロン仏大統領とトランプ米大統領/Photo by Gettyimages

ハッとする見立てである。

東京新聞はこのあと「そう思うのは考え過ぎなのか」と書いているが、新聞なのだから考え過ぎてほしい。そういえばこれを読んで、あれはそういうことかと思い出した一文があった。

同じ日の日刊スポーツのコラム「政界地獄耳」の『格差社会の象徴がゴーンだった』(11月22日)の次の部分。

《事件の背景には日産、三菱自動車、ルノー連合をめぐる仏・マクロン政権の合併工作があるのではないかとか、米トランプ政権の日本の自動車産業や軍産複合体との関係を含めた駆け引きがあったのではないか、との分析もある。》

後半の「米トランプ政権の日本の自動車産業や軍産複合体との関係を含めた駆け引きがあったのではないか」というのは東京新聞の「トランプへの日本からのお歳暮説」と一致する。

なんかとんでもない話になってきた。いや、日本を代表する企業の「日産トップ逮捕」がまず尋常ではないのだから、ここまでの見立てが出るのも当然か。

ちなみに日経のコラム「風見鶏」(11月25日)には、ゴーン逮捕の日にトランプ大統領が「フランス以上にナショナリストの国はない。メーク・フランス・グレート・アゲイン!」とツイートしたことを紹介している。いつも誰かをディスるトランプだからこれはただの偶然なのか、それとも・・・。

悪名高き日本の人質司法

こんな記事もあった。

《日産の川口均専務執行役員は20日朝、首相官邸に菅義偉官房長官を訪ねた後、記者団に「長官から当社をサポートいただけるとお聞きした」と語った。》(毎日新聞11月22日)

ゴーン報道とは何か? 最初の報道から3日間を振り返ると、当初はゴーンの銭ゲバぶりに焦点を当てた記事が多かったが、次第に日産とルノーの暗闘になり、ついには日本対フランスまで展開したのである。いつの間にか国と国の暗闘に「気づいてしまった」ようにみえる新聞各紙。

マクロン大統領とゴーン氏/Photo by Gettyimages

日本とフランスの「司法の違い」にも焦点が当たり始めた。

「司法先進国のフランスは、容疑者の人権が手厚く保護されていて、例えば、取り調べの全過程は録画・録音され、弁護人の立ち会いも必須です。森友事件で逮捕・起訴され、10カ月間も接見禁止で長期勾留された籠池容疑者夫妻のように、自白するまで帰さない日本の“人質司法”なんて論外でしょう。そんな事態になれば、フランス政府、マクロン大統領だって黙っていません」(全国紙司法担当記者)

 

これは「悪名高き日本の人質司法にゴーンは徹底抗戦する」という日刊ゲンダイの記事である(11月22日付)。

今後もさまざまな新聞記事が出るであろう。しかしゴーン事件は最初の3日間にポイントが詰まっていたと断言したい。