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ゴーン事件、新聞各紙を読み比べると見えてきた「問題の核心」

ポイントは最初の3日間に詰まっていた

事件翌日の朝刊からわかること

日産のカルロス・ゴーン会長逮捕(11月19日)から1週間ほど経ったが、新聞読み比べ的に言えば「最初の3日間」にすべてのポイントが詰まっていた。そう断言していい。ゴーン問題は3日間(11月20日、21日、22日)の記事に集約されていたのだ。

では報道初日(11月20日)の新聞をまず振り返ってみよう。

 

前日の夕方にゴーン会長の逮捕が報じられた。日産での西川社長の会見は夜の10時過ぎ。普通に考えればなんとも新聞泣かせである。

つまり、翌日の朝刊紙面は「どこの新聞がゴーン逮捕に食い込んでいたか」のヨーイドンの発表会でもあったのだ。どの新聞が先行していたかわかる。

読んでみると、朝日と日経が他を引き離していた。

まず朝日は初日の報道時点で「司法取引適用」(1面)、「司法取引カリスマ摘発」(2面)と、「司法取引」を複数面で大々的に書いていたのである(読売も司法取引に言及していたが1面のみ)。

他紙が「金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)」をメインに書いていたのに比べると朝日の司法取引推しは目立った。

これは何を意味するのか?

社会面を見ると、朝日はゴーン氏を乗せた飛行機が羽田空港に着陸したときの様子から書いているではないか。

《ゴーン会長が乗っていたとみられる機体は、ビジネスジェット用駐機場に入ると、まもなくタラップが下ろされた。すぐ脇に白いワゴン車が止まったが、ゴーン会長は外に姿を見せず、代わりにワゴン車から機内に出入りをするスーツ姿の男性らの姿が見られた。》(11月20日)

朝日も現場にいたということになる。

朝日は「特捜部は着陸をひそかに、だが、万全の態勢で待ち構えていた」と書くが、万全の態勢で待ち構えていたのは朝日も同じなのだ。

つまり、マスコミまでしっかり取り込みつつ、東京地検特捜部&日産はゴーン逮捕をいかに完ぺきに実行したかが朝日の書きっぷりからわかる。そりゃ朝日は自信をもって「司法取引があった」と初日からバンバン書くであろう。ゴーン包囲網は強烈だった。

次に日本経済新聞だが、他紙にはない具体例が載っていた。

《関係者によると、オランダに設立された日産子会社が海外の高級住宅などを複数購入し、ゴーン会長は賃料を支払わずに無償で利用していた疑いがある。こうした利益供与が実質的な報酬に当たる可能性があるとして、日産の関係者が特捜部に相談していたという。》(11月20日)

この日経の記事のあと「高級住宅」の話題が他紙にも飽きるほど出てきたのはご承知の通り。日経は報道初日に《事件の本質はゴーン会長による私的流用にあるとはいえ、》と書いていたのも見逃せない。ド派手な金遣い報道は日経が号砲を鳴らしたのだ。

「周到な準備」「クーデター」「ゴーン対日産幹部」「ゴーンのカネの流れ」……。報道初日の朝日と日経の記事にはゴーン報道の序盤の肝がほぼ含まれていた。すなわち特捜と日産による情報の主導である。