氏の発見した「緑色に光るタンパク質」は何がすごかったのか。2018年の終わりに、科学コミュニケーターが改めてその偉大な足跡を総括する。
こんにちは! 日本科学未来館科学コミュニケーターの田中です。
2018年、私にとって最もショックだった訃報は、2008年にノーベル化学賞を受賞された下村脩先生の訃報でした。
下村先生による「GFP」の発見がなければ、生命科学や医学の研究はここまで進まなかったことは間違いないと言えるでしょう。それほど偉大な発見をされた下村先生。学生時代、実際にGFPを使って研究をしていた筆者にとって、下村先生の訃報は非常にショックだったのです。
ここに哀悼の意を表すとともに、その業績のすばらしさを改めてご紹介したいと思います。
光るタンパク質GFP
下村先生は2008年に「GFPの発見と応用」でノーベル化学賞を受賞されました。GFPというのは、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein)、つまり緑色に光るタンパク質です。
オワンクラゲという光るクラゲからGFPを発見したのが、下村先生です。ノーベル賞は、後述するほか2名の先生方と下村先生が同時受賞されました。

ではこのGFP、いったい何がノーベル賞に値するすごいところなのでしょうか?
細胞の中を観察するには
私たちの体の仕組みを解明するには、細胞の中でどんな分子が、どの場所で、どんな働きをしているのかを知らなければなりません。それを知るためにはどうしたらいいでしょうか?
細胞は目に見えないほど小さいので、まずは拡大する必要がありますね。細胞を拡大して観察するためには顕微鏡が必要です。それでは、細胞をとってきて顕微鏡で拡大したらその中身がよくわかるかというと、実はそう簡単にはいきません。
細胞の中は透明なので、どこになにがあるのか、よく見えません。しかも細胞の中で働いている分子はものすごく小さいので、顕微鏡で簡単に見えるものでもありません。図で説明すると以下のようになります。

上図が教科書で説明されている細胞です。しかし実際は、下図のようなものなのです......

細胞は透明で、そのまま拡大して見ても何がなんだかわかりません(薄い線も、実際はほぼ見えません)。しかも、細胞の中で働いている分子は、これらの構造物よりさらに小さいのです。
じゃあどうしたらよいのか......見たい分子だけ色をつければいい!
といっても、どうやって色をつければいいのでしょうか?
そこで活躍するのが、GFPなのです。