2019.02.01
# 飲食店

ミスタードーナツの競合が、実は「ニトリと百均とスマホ」であるワケ

ビジネスを脅かしていたのは意外な相手
鈴木 貴博 プロフィール

ドーナツは「スマホ」に負けた

結局、グッズの競争力が下がったことによってミスタードーナツのラッキーカードは2006年に終了してポイントカードに衣替えします。

そしてミスタードーナツは原点に帰ってドーナツ本来の魅力で競争をすることになります。時代がデフレに突入したこともあり、定期的に人気のドーナツ一個百円のキャンペーンを行うなどして、ミスタードーナツは消費者の支持を得ていくことになります。

この後に冒頭で紹介したように、クリスピークリームドーナツやセブンイレブンなどドーナツ競合がドーナツ業界につぎつぎと参入する出来事が起きるのですが、結局はドーナツ業界でミスタードーナツを脅かすまでの存在には育つことができませんでした。

ではなぜ他社のドーナツは成長できなかったのか?

実は彼らはミスタードーナツではなく別の競争相手に敗れたのだという有力な説があります。

 

そもそもセブンイレブンがドーナツに参入した理由は、セブンカフェの成功がきっかけでした。店頭で香りとコクにこだわった高品質のコーヒーを販売したことで、スタバの店頭ではなくセブンイレブンでコーヒーを買って職場にでかけるといったライフスタイルの顧客が増えたのです。

これはまさにアメリカのニューヨークの出勤シーンと同じなのですが、アメリカではもうひとつ、朝、出勤をする際に売れる商品があります。それがドーナツでした。忙しいニューヨークでは片手にコーヒー、もう片手にドーナツを持ち、それを交互に口に入れ歩きながらストリートを歩くスタイルが定番。だったらセブンカフェの隣にドーナツを置けばきっと売れるだろうという目論みでした。

〔photo〕iStock

ところがここで落とし穴がありました。当のニューヨークでこのニューヨークスタイルはすでに時代遅れになりつつあったのです。理由はスマホです。片手にコーヒー、でももう片手にはスマートフォンを持っている顧客は、ニューヨークではすでにドーナツを手に持つスペースがなくなっていたのです。

では職場ではどうなのか。

90年代に私が働いていたシリコンバレーの企業では毎週水曜日の朝に会社のオフィスのキッチンに無料でドーナツがふるまわれる習慣がありました。社員同士が会社のキッチンで朝食を食べながら情報交換をすることに一定の意味があるということで、このような習慣は他の企業でもよく行われていたそうです。

ところが最近はドーナツの人気があまりよくない。理由は指先が汚れるからです。ドーナツを食べながらだと指先が油っぽくなってスマホの動作に支障をきたす。実はドーナツだけでなくそういったスナック類は、スマホ時代にはいってから同時に売上を下げはじめています。有名どころでは明治のカールや森永のチョコフレークが生産をやめたのもスマホが原因だったのではないかと言われています。

ミスタードーナツにとってはスマートフォンはセブンイレブンの参入を阻んでくれた恩人という見方もできますが、その一方で、いまやスマホは顧客の指先を巡ってミスタードーナツと競争を繰り広げる一番強敵の競合になってしまっているのです。

「ではどうすればいいのか」ですって?これはなかなか難問ですね。直接の競合なら戦うこともできますが、相手がスマホなら「スマホをやめてドーナツを手に持ちなさい」というわけにもいきません。

だったらこうしたらどうでしょう。ミスタードーナツを買うと一箱に一枚ついてくるあの油をはじく紙。あれをドーナツ一個につき一枚ずつ配るようにしたらどうでしょう。意外とみんなその紙を使うことで、ドーナツを食べながらスマホを支障なくいじれるようになるかもしれません。

まあとにかく今回は、それくらい世の中には「意外なところにビジネスを脅かす競争相手がいるものなのだ」という話なのでした。

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