2019.02.01
# 飲食店

ミスタードーナツの競合が、実は「ニトリと百均とスマホ」であるワケ

ビジネスを脅かしていたのは意外な相手
鈴木 貴博 プロフィール

ミスタードーナツの黄金時代

そもそも往年のミスタードーナツの勢いとはなんだったのか、最近の若い方が知らないミスタードーナツの黄金時代の話をしてみましょう。

ミスタードーナツの黄金時代とは何といっても1980年代後半の消費文化が華やかしき時代でした。

糸井重里が考案した西武百貨店の「おいしい生活」というキャッチコピーが世の中に浸透し、若者はポパイやオリーブといった雑誌を片手に街を闊歩する。学生の住居もアパートからワンルームマンションに変わり、そこに雑誌で見つけたちょっとおしゃれな家具やグッズを並べるのが典型的な若者の暮らしぶりでした。

今のようなデフレ時代ではなく、ちょっと高くてもいいものを買うという消費行動が支配的な時代。それはまさにバブル時代の始まりを告げる楽しい時代でした。この時期にミスタードーナツの大ヒット商品になったのがラッキーカード。スクラッチを削って出てきた点数を集めると人気の原田治さんのイラストがデザインされた生活グッズが手に入るあのキャンペーン商品でした。

そうなのです。ミスタードーナツの最盛期を作ったのはフレンチクルーラーやチョコファッションやポン・デ・リングといった現在定番となっているドーナツ製品以上に、ミスタードーナツで配布されていたおまけのグッズだったのです。

 

この時期、広告代理店の間ではこのラッキーカードのキャンペーンは超有名で、当時の他社の広告や販促のキャンペーンと比較してグッズの発注量が群を抜いて多かったことで知られています。何しろ抽選で当たるのではなくてドーナツを購入して地道にラッキーカードを集めれば必ずグッズがもらえるのです。

私の周囲も例外なく、ドーナツを買ってカードを集めて、原田治さんのイラストが描かれたマグカップやフリースの毛布、小さなコーヒーテーブルなどを喜んで手に入れたものでした。

ラッキーカードの仕組みは非常によくできていて、300円で1枚もらえるカードをキャンペーン期間内に10枚集めてグッズを手に入れるためには、ドーナツ5個を2か月に5回ぐらい購入しなければいけないのです。これがちょうどドーナツを買って帰っておやつにするにはいいローテーション間隔になっていて、無理なくミスタードーナツのリピーターが育っていったわけです。

ニトリとキャンドゥが破壊したもの

おそらくこの時期、全国のケーキ屋さんがミスタードーナツを最大の競争相手だと考えていたことでしょう。ちなみにこの時代、まだコンビニスイーツは今のようには発展しておらず、スイーツはケーキ屋さんで買う、そんな時代でした。

そのラッキーカードの魔力が薄れてきたのが90年代の終わりごろ。時代はデフレの様相を呈し始め、おいしい生活は時代遅れになってきました。ミスタードーナツで配られていたパステルカラーのグッズもなんとなく子どもっぽく見えるようになっていき、次第にグッズの魅力が薄まっていきます。

今にして思えばなぜおしゃれなグッズの魅力がこの時期に減ってきたのかといえば、この時代を境に、世の中におしゃれで安価な生活グッズがあふれるようになってきたからです。その象徴がお値段以上のニトリの全国展開と、ダイソー、キャンドゥ、セリアなど百均の商品のクオリティが格段に進化したことでした。

そうなのです。ミスタードーナツの原田治グッズが大ヒットした背景には、そのようなクオリティのグッズが当時、東急ハンズやロフトで1500円ぐらいで売られていた生活グッズと同じぐらいのクオリティだったから。ところがそのレベルの商品は2000年代に入ってニトリで数百円で、ないしはキャンドゥで百円で手に入るようになったことで、わざわざドーナツを三千円分購入してまで欲しいものではなくなってしまったのです。

SPONSORED