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ミスタードーナツの競合が、実は「ニトリと百均とスマホ」であるワケ

ビジネスを脅かしていたのは意外な相手

「思わぬ競争相手」を見抜く

私が専門としている競争戦略の世界では「真の競争相手は思わぬ相手であった」という教訓話がよくあります。

お昼時にランチメニューで顧客を奪い合う定食屋さんの本当の競争相手がコンビニであったり、繁華街で二次会需要を呼び込みあう居酒屋チェーンが実は顧客をカラオケボックスに奪われていたりという具合に、競争相手は同じ業態とは限らないものだというのがその教えです。

特に最近ではこの「異業態の競争相手」がビジネスの生命線を脅かす事例が増えています。雑誌の廃刊が相次いでいるのは「インターネットのほうが情報が詳しい」からですし、地方で百貨店や大手スーパーが閉店してしまう理由は「アマゾンのほうが便利」だからです。

そのような時代ですから、経営戦略をたてる上ではこの「思わぬ競争相手」を特定する技術が重要です。今回のコラムではわかりやすいケースを挙げて、この見えない競争相手の影響を考える思考トレーニングをしてみましょう。事例として取り上げるのはミスタードーナツです。

〔photo〕iStock

クリスピークリームとセブンイレブンには勝ったが…

過去10年間のドーナツ業界は競合の新規参入の連続でした。アメリカから上陸したクリスピークリームドーナツは、そのやわらかくて甘いドーナツが人気となってお店の前には1時間待ちの行列ができました。その一方でセブンイレブンもドーナツへの参入を表明し、レジの横においしくて作り立てのドーナツを並べました。

特にセブンイレブンの場合は販売開始当初、店頭に並んでいたドーナツはまるでミスタードーナツの人気メニューそっくり。日本一販売力があるセブンイレブンにこんな競争を仕掛けられたらひとたまりもないんではないかと当時はミスタードーナツの先行きが危惧されました。

ところが結果だけ見ると、クリスピークリームドーナツもセブンイレブンも、ドーナツ業界でミスタードーナツの地位を奪うほどの成功にはなりませんでした。

 

クリスピークリームドーナツの場合、ブームが終わるとともに大型店は閉店し、今は街角にある小さなドーナツ屋さんとして生き残りを図る存在になってしまいました。セブンイレブンは何度か商品を改良して頑張ったのですが、結局売上は芳しくはなく、店頭レジ横からはドーナツを撤去してしまいました。

直接のドーナツ業界内での競争にはミスタードーナツが勝利した形ですが、しかしそのミスタードーナツにも往年の勢いは感じられません。何かがミスタードーナツの顧客を奪っているのですが、それが何なのかを考えてみましょう。