米NASA、中国JDドットコムが明かした「AI活用」の驚愕の中身

アメリカの「AIサミット」に潜入してみた
荻野 調 プロフィール

あのNASAがあえて「古いAI」を使うワケ

それでは最先端の現場ではどのようにAIが利用されようとしているのか見て行こう。

興味深かったのはNASA(アメリカ航空宇宙局)のセッションだった。テーマは「宇宙探査におけるAIの役割の拡大」。火星探査機に乗せる画像認識プログラムについて詳細に説明をしていたが、特に興味深かったのはNASAほどの世界最先端の科学者が結集された機関でも、使うAIは決して最先端を選ぶとは限らないということだ。

そもそも火星探査機を制御するためには、地球から火星に信号を送っていては命令から行動まで数分単位のロスが生まれる。刻一刻と変わる状況には対応しにくいので、AIが自律的に状況を判断し、探査機を制御させたい。

たとえば火星の「岩」を採取するためには、AIはその岩が目的物であるのか、また採取可能なのかを判断しなければならないし、その目的物にたどり着くまでに進むのか曲がるのか、後退するのかを判断しなければならない。

我々日本人ならこれほどまでに高度な探査機を開発するのだから、当然、使われるAIも高度で最先端なものだろうと想像しがちだが、NASAのプレゼン資料を見てみると、そこにはなんともありふれた古いAIアルゴリズム(SVM)が使われていた。

これはNASAのAIエンジニアが「AIの適材適所」をよく理解しているという一流の証だ。

つまり探査機の作業の内容と、AIの能力をしっかり理解できていれば、なにも最先端のAIエンジンを利用するのが最適ではないということ。日本のフィンテックの現場では、最新のAIエンジンを欲しがったり、AIに異様なビッグデータを注ぎ込んだりして、それでも正しく動かないと困惑している人がいるが、作業の目的とAIの能力さえ正しく理解していれば、古いAIエンジンでも変わらず能力を発揮するのだ。

NASAが使っていたこの火星探査機のAIは、あまりにも古くて私も驚いたが、宇宙探査を知り尽くしたNASAのAIエンジニアから見れば、必要な性能と処理時間の観点で最適のAIを選んだということだろう。世界の一流AIエンジニアはこういう考え方をしているのだ。

 

中国のJDはハッカー対策にAIを活用していた

また中国のECサイト『京東商城』を運営するJDドットコム(以下、JD)のセッションも非常に興味深いものだった。JDは中国ではアリババと双璧をなすECサイトで、そのサービス内容がアマゾンに似ていることから「中国のアマゾン」とも呼ばれている。

人口10億人を抱える中国にあって、月間に3億人が利用し、7億アイテムの発注があるという。桁違いの成長を見せているが、それにともなって「詐欺」や「搾取」目的のハッカーのよるアタックが増えており、その対策でAIを使っていることを発表していた。