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日産はなぜ「幹部の総退陣」という手を打たなかったのか

まずは信頼できる体制づくりが必要では

この先何が待っているのか

西川廣人社長が率いる日産自動車は先週木曜日(11月22日)、臨時取締役会を開き、有価証券報告書の虚偽記載の疑いで逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者(前会長)ら2人の「代表権」を解く解任決議案などを全会一致で可決した。

ゴーン容疑者らの逮捕からわずか3日後という解任劇に、日産が「機動的な対応をした」と評価する向きは多いかもしれない。新聞やテレビでさえ、次々に出て来るゴーン容疑者らの役員報酬の隠蔽工作や背任・横領容疑を巡るスクープ合戦に忙殺され、経営やコーポレート・ガバナンス(企業統治)の観点から解任劇の意味を評価する余裕がないようだ。

しかし、一連の西川・日産の対応はあまりにも拙速であり、乱暴だ。ゴーン容疑者らを庇う気は毛頭ないが、西川・日産がゴーン解任の根拠にした会社法上の善管注意義務は、ゴーン容疑者らの犯罪を見逃した日産の取締役全員にかかる義務である。

仮にゴーン容疑者らが有罪ならば、会社法に照らして、西川社長を含む取締役全員が「特別利害関係」を有する取締役にあたり、解任決議に票を投じることはもちろん、取締役会を開くことすら許されなかった疑いが残る。

なぜ、西川・日産は、これほどガバンス不在状態になったのか、この状態の先に何が待っているのか、そして、どうすれば影響を最小限に抑えられるのか。そういった命題を考えてみたい。

 

拙速の感

まず、事件を整理しておこう。

11月19日の夕方5時過ぎ、東京地検特捜部が、羽田空港にプライベートジェットで乗り付けた、日産自動車のゴーン会長を金融商品取引法違反の容疑で任意同行した、とのニュースが世界中を駆け巡った。

その夜、検察は、ゴーン会長と日産のグレッグ・ケリー代表取締役の逮捕を発表した。2人の容疑は「2015年3月期までの5年間に、ゴーン容疑者の役員報酬が約99億9800万円だったにもかかわらず、約49億8700万円に過ぎなかったとの虚偽の記載をした有価証券報告書を5回(5年、筆者注)にわたり関東財務局に提出(一般に開示、同)した」ことと、背任や横領の疑いがあることだった。

ちなみに、有報の虚偽記載は証券取引の信用基盤を破壊する重罪で、金融商品取引法が「10年以下の懲役か1000万円以下の罰金、またはその両方」を科すことを規定している。翌日の新聞報道によって、今年6月に制度が創設されたばかりの日本版・司法取引が今回の捜査で使われたことも明らかになり、事件への社会的な関心が一段と高まった。

一方、ゴーン容疑者が任意同行を求められたのとほぼ同時刻、示し合わせたかのように、日産も文書でコメントを発表した。

数ヵ月にわたる社内調査の結果、ゴーン容疑者とその側近で代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者の2人が、開示されるゴーン容疑者の報酬額を少なくするため、長年にわたり、実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載していたほか、日産の資金を私的に支出するなど複数の重大な不正行為もあり、明らかに取締役としての善管注意義務に違反したと強調する内容だった。

筆者は、この発表文に強い違和感を持った。何十人もの人が作成作業に携わる有報に虚偽の記載をするという犯罪を、ゴーン、ケリーの2容疑者がたった2人で犯したと日産が決め付けたうえ、この段階で早くもゴーン容疑者の会長職・代表権、ケリー容疑者の代表権のはく奪を取締役会に諮る方針まで明記したからである。

違和感を抱いた理由は後で詳述するが、ひと言でいえば、拙速の感を免れなかった。