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蔡英文総統の党主席辞任で激化する「台湾を巡る米中の綱引き」

有権者は「独立」より「経済」を取った

与党民進党が歴史的な大敗

「敗戦投手蔡英文」
「民主退歩党」
「藍緑版図大洗牌」
(青と緑の版図がガラガラポン)

11月24日夜、私は台湾のインターネットテレビで開票速報を見入っていたが、冒頭のように、激震を伝える文字が次々に現れた。台湾全土の開票速報は、野党・国民党の党色である青、青、青で、与党・民主進歩党の党色である緑が目立たない。

前回、4年前の時は、私も台湾で取材したが、今月6日に行われたアメリカ中間選挙並みの、将来の台湾を左右する激闘が繰り広げられるのが、台湾の統一地方選挙である。

一例を挙げれば、街のレストランや薬局に行っても、店のメニューや宣伝文句の文字が「緑色」(与党民進党の党色)か「青色」(野党国民党の党色)かによって支持が分かるというほど、台湾を二分する闘いが行われる。4年前は、「緑」が躍進したものだ。

それが今回の統一地方選挙では、蔡英文・民進党政権が、歴史的な大敗を喫した。

22の市長・知事のうち、これまで民進党は13の地域で首長を占めていて、過半数死守を目標に掲げていた。それを、一気に6地域まで減らしたのだ。

辛うじて死守したのは、桃園市、台南市、基隆市、嘉義県、新竹市、屏東県のみというありさまである。特に、「六都」と呼ばれる台北市、新北市、桃園市、台中市、高雄市、台南市の中で、2都市しか勝てなかった。与党にもかかわらず、惨憺たる結果だ。

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逆に野党・国民党は、首長ポストが8つから15へと、大躍進を果たした。

具体的には、新北市、台中市、高雄市、嘉義市、苗栗県、彰化県、南投県、雲林県、宜蘭県、花蓮県、台東県、澎湖県、金門県、連江県、新竹県の首長ポストを取ったのだ。

これまでは、北部は国民党が強く、中南部は民進党が強いと言われたが、今回は中南部の台中市長と高雄市長を、国民党が取った。とりわけ、過去20年にわたって民進党の金城湯池だった南部最大の都市・高雄で、国民党が勝利したことは大きい。

 

国民党が立てた候補者は、韓国瑜・元立法委員(61歳)。高雄出身でもなければ、新鮮味があるわけでもない。これまで様々な選挙で当落を繰り返してきた、毀誉褒貶の激しい政治家だ。

この「韓国語」と発音がよく似た政治家は、韓国とは何の関係もないが、「高雄に韓流ブームを起こす」と宣言し、蔡英文政権を徹底的に批判する戦略に出た。

特に、「『対中国説不』(中国に対してノー)では高雄の経済は立ち行かなくなる」として、中国との関係改善を訴えた。「観光産業は最もコストがかからない経済振興策なのに、中国人観光客が3分の2に減ってしまったことで、高雄市民の暮らしは悪化した」というわけだ。

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トレードマークはスキンヘッドで、床屋で頭を洗うシーンをテレビに撮らせ、「市民のために頭を使いすぎたことで、髪の毛がたったの100本になってしまった」と嘆いてみせたりしている。宋楚瑜・元台湾省長(現・親民党主席)を髣髴させる、伝統的な国民党の「弁が立つ」政治家だ。

こういう政治家は、2016年5月の馬英九・国民党総統の引退に伴って、死滅したと思われたが、「韓流現象」を巻き起こし、ゾンビのように生き返ったのである。

しかも、民進党の陳其邁候補に5万票以上の差をつけて圧勝したことは、本来なら民進党支持者であるはずの多くの高雄市民が、蔡英文政権のこの2年の執政を、冷めた目で見てきたことを意味する。