ハゲタカジャーナル、ダメ絶対! でも、その横行にはそれなりの理由が……

あなたの知らない査読論文の世界
山田 俊弘 プロフィール

査読論文とは何か?

科学者は日々、研究活動に勤しんでいます。とはいえ、研究しっぱなしでは科学者とはいえません。

研究成果を論文の形にまとめ、それを査読論文として公表できたときに初めて、研究が研究として認められるからです。つまり、いくら研究をおこなっても、その結果を査読論文として公表できなければ、その研究はやっていないのと同じなのです。

先ほどから私は、「科学者は査読論文を公表することが大切だ」と謳っているのですから、「それならば、査読論文をどんどん書けばいいじゃないか」と思われたかもしれません。確かにその通りです。その通りなのですが、論文は書けば必ずジャーナルに掲載されるわけではないのです。つまり、ジャーナル側の審査に合格する必要があります。そして、論文を書いたとしても、それが査読審査に合格し、ジャーナルに掲載されなければ、書いていないのと同じことなのです。

それでは、論文の査読審査がどれだけ厳しいものなのか、ご説明します。

【写真】論文を書いても査読審査を通って公表されなければ、書いていないのと同じだ
  いくら研究を行い、論文を書いても、それが査読審査に合格し、ジャーナルに掲載されなければ、書いていないのと同じことなのである photo by iStock

査読審査とはどのようなプロセスか?

自分の研究成果を論文にまとめ上げた科学者が次にすることは、その論文を掲載するにふさわしいと考えるジャーナルへ投稿することです。

そして、投稿直後からその論文の査読審査が開始されます。査読審査に携わるのは、ジャーナルの編集長、その部下である編集委員、そして外部審査を行うレフリーです。立場は異なりますが、三者とも科学者です。

最初に論文を読むのは、ジャーナルの編集長です。編集長は、その論文が掲載可能なレベルに達しているかどうか、ざっくりと判断します。この段階で掲載にふさわしくないと判断されれば、すぐさま著者の元に不合格通知が送られます。

一方、この審査を通過した場合、編集長は数十人いる編集委員の中から論文の審査にふさわしい1人を選びだし、本格的な審査を依頼します。編集委員ももちろん、論文を読みます。そして、彼(もしくは彼女)により掲載にふさわしくないと判断されれば、編集長に差し戻され、その段階で、編集長から著者の元に不合格通知が送られます。

幸いにして編集委員の審査を通過すれば、その論文が掲載にふさわしいか判断する第三者による審査を受けることになります。論文掲載の是非を問うセカンドオピニオンを得ることが目的です。この第三者はレフリーと呼ばれ、ひとつの論文の審査を複数のレフリーが並行しておこないます。

査読の流れ全体
  図1 レフリーによる審査までの論文の査読審査の流れ。レフリーの審査以降の流れは、図2を参照。編集長・編集委員・レフリーの3段階の審査がおこなわれる。 レフリーの人数はジャーナルによって異なる

レフリーは、その論文が報告する研究と近い学術分野に属する科学者が担当します。ただし、レフリーは匿名で審査を進め、誰がレフリーを担当しているか、著者は知らされません。もし論文の著者に誰がレフリーなのか知られてしまうと、審査に科学以外の要因が入り込んでしまう可能性が生じるからです。

レフリーは、「掲載する価値がある成果か?」「論理展開に誤りはないか?」「実験手法に問題はないか?」などに気をつけながら、慎重に論文の審査を進めます。そして、審査結果をレポートにまとめ、編集委員に提出します。

レポートを受け取った編集委員は、レフリーのコメントを参考にしながら、論文に掲載の価値があるかをあらためて総合的に判断します。ただし、じつはこの時、合格/不合格の裁定が下るのはまれです。つまり、合格でも不合格でもないグレー判定が出ることが多いのです。どういうことでしょうか?

【図】レフリー審査後の著者へのフィードバック
  図2 レフリー審査後の著者へのフィードバック
各レフリーは論文の問題や曖昧な部分を指摘するコメントをレポートにまとめて、編集委員に送る。編集委員はレフリーレポートを参考に審査結果を出す。審査結果が合格か不合格の場合は、その旨を編集長に報告する。編集長は、審査結果を基に、最終的な合否の判断をする。
ただし、実際には編集委員は、合格でも不合格でもないグレー判定を下すことが多い。この場合、編集委員は直接著者に審査結果を伝える。グレー判定を受け取った著者は、期限までにレフリーの指摘に対応(ときには反論)するように論文を書き直し、編集委員に再提出する。再提出された論文は、図2の二次審査以降の過程を再び経る。再審査のループは、すべてのレフリー、編集委員、編集長が合格と判断するまで続けられる。もちろん、再審査の途中で不合格になることもある。