ネットを徘徊する怪物「差別的デマ」は、いま誰を餌食にしているのか

ネット右翼十五年史〈番外編〉
古谷 経衡 プロフィール

長期戦を覚悟する必要がある

こうした言説をそのままトレースしたのが、(株)DHCが製作するテレビ番組『ニュース女子』(TOKYO MX)であった。2017年1月6日放送の同番組で、「現地取材に基づく」としたうえで「沖縄の基地反対派は日当をもらって現地で反対運動をしている」「基地反対運動の中に中国人・韓国人が混じっている」などの、まさに「沖縄デマ」が垂れ流されたのだ。

結局、同番組はBPO(放送倫理審査会)から重大な放送倫理違反を指摘され、上記の報道は虚偽として否定された。現在『ニュース女子』は地上波テレビからは追放され、ネットでの放送のみとなっている。取材や事実を尊重せず、差別的言説を流布した同番組の愚挙は、今後も放送界の汚点として記憶され続けるであろう。

しかし、大気循環のごとく人員の出入りが激しいネット右翼界隈では、「在日特権」などがほとんど忘れ去られるとともに、「沖縄デマ」が圧倒的主流を占めつつあるのも事実だ。

先の沖縄県知事選挙に於て、玉城デニー氏が過去最大の得票で選出されたことなど、彼らにとっては余り関係が無い。彼らの中では、「玉城氏は中国の手先であり、選挙戦には反日勢力が関与していた」との妄想を以て、厳正な民意であろうといくらでも黙殺できるからである。

 

「沖縄デマ」は、沖縄本島とそれを支える本土の自称保守系言論人や自称保守系雑誌、自称保守系ネットメディアのなかで循環しながら再構築・再拡散を繰り返し、徐々にではあるが、一部の言説空間の中で「揺るぎない真実」として定着しようとしている。これを看過することは、我が国にやがて大きな禍根を招きかねないと筆者は考える。

「沖縄デマ」の発端はつい2、3年ほど前だが、当事者の存在しない「在日特権」デマですら、前掲の図表の通り、2002年から実に10年強も続いた。「沖縄デマ」の寿命は、それよりも相当長いかもしれない、と覚悟しなければならない。

現在では「沖縄デマ」への抵抗こそネット右翼との戦いの最前線であり、またフェイクニュースに日本社会が勝つか負けるかを占う天王山とも言えるのである。