なぜ「高齢者の性」の話はタブーになったか…田原総一朗が辿る

高齢者の性を巡る旅⑥
田原 総一朗 プロフィール

射精介助の手順とは

――坂爪さんは、著書の中で、「介護現場でのセクハラが常態化しており、現場で動いている女性の介護福祉士やケアマネジャー、看護師に尋ねれば、被害の実例は山のように出てくる」と書いていらっしゃいます。それをあらためて引用させていただきます。

<圧倒的に多いのは男性利用客から女性職員へのセクハラである。『陰部を見せてほしい』などの卑猥な言葉をかける。若い頃の性体験を自慢する。胸やおしりを触る。移乗介助の隙に不必要に身体を密着させてくる。性交を要求するなど、言動の内容は多岐にわたる。

入浴介助の際に、『陰部を洗ってほしい』『裸になって一緒に入ろう』と要求してくる。通院介助の際に、タクシーの運転手に『ラブホテルに行ってほしい』と告げる、といった直接的なものものあれば、職員に対して『これで一緒に寝てほしい』『おしりを触らせてほしい』と現金を渡そうとする人もいる>

 

――具体的に、坂爪さんのホワイトハンズでは、こういう問題は起きているのですか。

「施設では、そういう被害がたくさんあるのでしょうが、ホワイトハンズの利用者は自力では手足を動かせない重度身体障がいの方々なので、今のところそういう問題はほとんど起きていません」

――なるほど、それでケアスタッフさんは、申し込みのあった重度の障害者の家を訪問して、そしてどうするのですか。いきなり射精介助というわけにはいかないでしょう。

「基本的には普通の訪問介護とまったく同じです。訪問して、かんたんに世間話をして、それから準備ですね。お湯とタオルを準備して、ズボンだけ脱いでもらって、周辺を軽くマッサージして、手で射精に導くというかたちです。終わったらズボンをはいていただいて、後片付けして、軽く世間話をして退室という形が多いです。

――だいたい1件につき何分くらいですか?

30分の方が多くて、長くて60分ですね」

――それで、こんなことを聞いて申し訳ありませんが、1回いくらですか?

「今、サービスはすべて無料化しています」

――えーっ。無料ですか?

「今年から無料(交通費・移動費のみ利用者負担)にしたのです。今まで30分2800円でやってきたのですが、お金に若干余裕が出てきましたので――」

――それで、ケアスタッフさんの方はどうなのですか? やはり無料ですか?

「いえいえ、ケアスタッフさんの給料は払ってます」

――どうやって、やっていけるのですか。ケアスタッフさんには給料を払って、介助される障害者の方は無料というと、そのお金はどうやって集めるんですか。

「障害者の性に関する研修や講演を全国各地でやっているので、テキストを作って販売したり、現場で集めたデータを整理してガイドラインや書籍を作ったり、そうした収益をうまく回してやっています」

――でも、年間に100件やっていれば、けっこうな金額になりますよね。

「でも、年に数十万円ですから、何とかやっていけてます」

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