坂爪真吾氏(左)と田原総一朗氏(右)

なぜ「高齢者の性」の話はタブーになったか…田原総一朗が辿る

高齢者の性を巡る旅⑥

「原典」の著者に会う

このシリーズを始めるにあたって、最も頼りにしたのが、坂爪真吾氏の『セックスと超高齢社会』という書籍であった。

この本によって、高齢者の施設で、性が非常に問題になっていることを知った。介護現場での女性介護士などに対するセクハラが常態化しているのだという。かつては、施設に入っている男性と女性との恋愛はタブーであったが、現在ではある程度は認められているようだ。

シニア婚活パーティやバスツアーがあちこちで行われていて、いずれも盛況だということもわかった。近年になって、高齢者ストーカーが増加していることも知らされた。2016年の警察白書によると、60~69歳のストーカーが1510件で、70歳以上が615件ということで、ストーカーの12%が60歳以上ということになる。

そして、シニア専用のデリヘル「こころあわせ」のことを知ったのも、この書籍であった。

 

坂爪真吾氏は、1981年新潟市の生まれ、東京大学文学部を卒業して、一般社団法人ホワイトハンズの代表理事を務め、重度身体障害者に対する射精介助サービスを行っている、ということだ。

その坂爪氏に、東京市ヶ谷の貸し会議室で会えた。新潟から上京してくださったのである。若くて明るく、見るからにさわやかな人物であった。

坂爪氏の書籍『セックスと超高齢社会』についての感想などを話して、さっそく坂爪氏に問うた。

――さっそくですが、坂爪さんが高齢者の性の問題に関心をお持ちになったきっかけ、動機は何ですか。

「私はこれまで、『障害者の性』という問題にずっと取り組んで来たのです」

――それは、いつ頃からですか?

「10年ほど前、2008年に『ホワイトハンズ』というNPOを立ち上げて、重度身体障害のある男性に対する射精行為の介助を始めました」

坂爪真吾氏

――そのことを知って、非常に関心を抱きました。具体的にどういうことをするのですか?

「障害のある方のご自宅に看護師、もしくは介護士のケアスタッフを派遣して、介護用の手袋とローションを使って射精の介助を行います。自分で射精行為のできない人たちを手伝うわけです」

――なるほど。だけど、そもそもなぜホワイトハンズを始めようと思われたのですか。

「大学時代に、ジェンダーやセクシャリティを研究する東大の上野千鶴子さんのゼミにずっとおりまして、そこで性風俗産業の研究をやっていました。何かこう、性に関するサービスをアンダーグラウンドなものだけではなく、もっと一般の人にも使ってもらったり、理解してもらいやすいような形に変えていきたいという思いがあって、自分でNPOを作って活動を始めたのです」

――上野さんは、よく存じています。だけど、坂爪さん、なぜ性に興味をお持ちになったのですか?

「高校時代に、女子高生の援助交際ブームを社会学的に論じていた宮台真司さんの書籍にはまった時期があって、自分も東大に行って社会学を勉強しよう、と思ったのです」

射精介助は1年に何件?

――そこで、ホワイトハンズですが、派遣する介護士さんは、どうやって集めたのですか。

「基本的にホームページで、インターネットを使って募集しています」

――募集するのは、女性ですか?

「基本は女性です。女性にケアをしてほしいという方がほとんどなので」

――それで、障害者からのニーズはどうやってさがすんですか?

「それも同じくホームページで、利用したい人は申し込んでくださいと呼びかけています」

――それで、坂爪さんがホームページで呼びかけると、どのくらい反応が来るものですか?

田原総一朗氏

「はじめに新潟でサービスを開始したのですが、全然反応がなくて、東京や大阪の方から、いっぱい来るようになったので、もっぱらそちらで活動しています」

――では、介護士さんも東京や大阪の方ですか。

「はい、地元の方です」

――それでは、なぜ坂爪さんは新潟に住んでいらっしゃるのですか? 新潟だと、何かとやりにくいのではないですか。

「パソコンとスマホがあれば、どこにいても仕事はできます。東京は家賃や物価が高いし、子育ても大変です。私は子供が2人いるのですが、新潟だと保育園に入りやすくて助かっているのです。それに、新潟に住み慣れているためか、新潟は住みやすいのですよ」

坂爪氏はまったくかっこうをつけない、素直な口調で話した。

――そこで、具体的に、ホワイトハンズは、月に何ケースぐらい介助を行っているのですか。

「射精介助は、1年間で100件前後なので、月に10件前後ですね」

――月に10件前後ですか。それでケアスタッフさんは何人くらいいらっしゃるんですか?

「今、1、2……4人くらいです」

――ケアスタッフさんの年齢はどれくらいですか?

「だいたい30代半ばから40代の方々で、一番若い方が20代半ばですね」

――どういう女性がケアスタッフを希望してくるんですか?

「介護や看護の現場で、障害のある人の性の問題にぶつかったのだけれど、どうしたらいいかわからないので、もうちょっと勉強したい、そう思って来られる方もいます」