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「黒いダイヤ」密漁ナマコ規制強化で、闇社会の資金源は断たれるか

罰金は一気に15倍へ引き上げ

隠れた「人気輸出品目」

密漁品の高値取引が横行するナマコについて、漁業法の罰金が現在の200万円から15倍の3000万円に引き上げられることが決まった。水産庁が、今国会で成立する見込みの水産改革法案に盛り込む。

ナマコはかねてから、罰金を支払っても得られる利益のほうが上回る密漁品として、暴力団の資金源となっていると指摘されてきた。水産庁は密漁品を引き取る業者への罰則も新設し、流通面からも取締りを強化する方針だ。

実は、ナマコは隠れた日本の「人気輸出商品」だ。日本では生のまま酢の物にして食べるのが一般的だが、中国ではスープで煮込むなどして食べる高級食材として親しまれている。

日本のナマコは品質がよいとされ、2017年の輸出額は約210億円と、水産物ではホタテ、真珠、サバに次ぐ主力品目となっている。北海道や青森県などが産地で、国内で乾燥処理などを施した上で主に香港へ輸出され、中国全土に販売されている。

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近年の中国経済の発展に伴い、干しナマコの1キロ当たりの輸出取引額は約2万8000円と高値で推移しており、漁業関係者の間では「黒いダイヤ」とも呼ばれている。

 

「罰金は入漁料、懲役は休漁日」

今回の罰金引き上げの背景には、これまでの罰則がナマコの密漁者にとって軽すぎ、抑止力になってこなかった現状がある。

ナマコ密漁の罰則は、現行では漁業法違反(無許可操業)による3年以下の懲役、または200万円以下の罰金となっている。水産庁によると、2012~16年の5年間で検挙されたのは263件で、そのうち懲役刑になったのは50件、刑期が6ヵ月を超える者が34件で最長30カ月。実際には懲役刑が科されず、罰金のみの適用が多いことがうかがえる。

同じ期間で罰金刑を科されたものは244件で、10万円を超えるものが約6割の148件、最も重い者でも100万円だった。ナマコの密漁は1度で数十万円以上稼ぐこともできるとされるため、密漁者からは「罰金は入漁料、懲役は休漁日」と揶揄されていた。

さらに、ナマコ密漁の摘発を困難にしているのが、現行犯での逮捕が原則となっていることである。

刑法では窃盗罪で「他人の財物を盗むこと」が禁じられているが、海産物は所有者のいない「無主物」とされるため、窃盗罪での検挙はできない。そのため、漁業法違反で検挙することになるが、宝石や金とは違い、ナマコなどの海産物は指紋などの証拠が残らない。

その上、獲ったナマコが「販売目的であること」を立証する必要もある。たとえ密漁現場を押さえられたとしても、すぐにナマコを海に放り込み、投棄してしまえば「趣味で集めていただけだ」という言い訳が通る現状があった。