検証・2つの技術がフェリーで3時間の離島「海士町」を蘇らせた

「CAS」と「遠隔授業」を現地ルポ
伊達 雄亮 プロフィール
隠岐学習センター隠岐学習センター

学習センターでは、物理、数学、英語などを指導する「教科指導」と、生徒さんのキャリア教育 「夢ゼミ」を実施しています。

夢ゼミは生徒さんそれぞれの目標や興味に合わせてテーマを選び、それに合った地域課題解決を自ら実践してキャリアを考える活動です。これらに加えて、多様な視点を養うために島内外からゲストを招いての講演会も行っています。

学習センターの通路にある黒板からも、ゼミの様子を垣間見ることができました。

学習センター内の黒板学習センター内の黒板

学習センター内部を特別に、隠岐島前高校3年生の生徒さん(以後、Aさん)に案内していただきました。

Aさんは「島留学」という形で島外から隠岐島前高校に入学し、寮生活をしながら通っているそうです。今では約半数の生徒さんが島外からの生徒さんだとのこと。

「海士町の畜産現場に入って『隠岐牛』のブランド価値を高める取り組みを生産者と一緒に考えたり、島への漂着ゴミのような地域の課題を解決する方法を授業として探ったりする教育は、とても勉強になります」

Aさんはこう話す一方で、「島内には科学館などの施設がほとんどなく、島外の人と交流して意見交換する機会が少ない点は、都会に住む高校生と比べたときの格差として感じます」とも話していました。

その格差を埋める方法の一つとして、海士町には「遠隔授業システム」があるそうです。 この遠隔授業システムについてAさんはこう教えてくれました。

「海士町では宮崎の高校の生徒さんと意見交換を行う取り組みがあったり、国を超えて日本から地球のほぼ反対側にあるウガンダの生徒さん達との交流までできたりします。情報通信技術(ICT)により繋がることで様々な価値観を持つ人と意見を交わすことが勉強になります。遠隔授業システムで格差が埋まる、どころか、ウガンダの人とはここじゃないと交流できないから、プラスなんじゃないかな」

活性化の要因は「人の力」

実は隠岐島前高校と日本科学未来館は夢ゼミの一環で遠隔授業を行ったことがあり、ゲノム編集や宇宙などをテーマに科学コミュニケーターが授業したことがあります(下の写真は同僚の科学コミュニケーター高知尾が宇宙について遠隔授業している様子。科学コミュニケーター宗像が書いた遠隔授業に関する記事はコチラ)。

遠隔授業遠隔授業

離島などの地域で発生する都市部との格差。これを遠隔授業システムというICTの力で海士町では埋める取り組みをしていました。

地域活性化で注目されている離島を自分の足で周り、そして地元の方に聞いた話を元に考えると、海士町は最先端の科学技術が溢れた島、というわけではありませんでした。

しかし海士町特有の課題をしっかり見極めた上で、必要な場所に課題解決のための科学技術を導入していました。

今回海士町を訪れて、ここを活性化させている要因は、課題をしっかり見極めてそれに合わせた解決策を実施していく「人の力」だと感じました。

その解決策の一つがCASや遠隔授業システムのような「科学技術」だったのだろうと思います。

海士町に行き、改めて科学技術の使い方について考えさせられました。どんなことに、どんな科学技術を使って、どんな課題を解決したいのか。これを「島」のレベルで考えて成功したのが海士町だとすると、「家族」、「学校」、さらには人口約1400万人の「東京」、約1億3000万人が住む「日本」、約75億人が住む「地球全体」などそれぞれの大きさに広げるとどうなるのか。

これを考えていくことがそれぞれの大きさのコミュニティを活性化する方法に繋がるのではないか、と感じました。

このことについて、ぜひ未来館でお話ししましょう!

【参考文献】
1 住み続けたい島へ - 島の人たちと考えた 海士町|SDGs
2 CAS技術の進化(株式会社アビーHPより)
3 CAS機能技術の食品食材から医学医療への応用開発
4 隠岐学習センターHP
5 海士町 遠隔授業システム

※本記事にコメントされたい方は、日本科学未来館科学コミュニケーターブログまで。