中国最高級ホテルの「ヤバイ秘密」を暴露した投稿動画の波紋

みんな薄々感じていたが
北村 豊 プロフィール

以前から疑惑、5つ星の衛生観念

花総が上記の動画を通じて言いたかったのは、中国ホテル業界における衛生観念の欠如である。

それを告発するために、5つ星ホテルのコップ洗浄に着目した彼は、隠しビデオカメラで撮影した客室係によるコップ洗浄の映像を証拠として、ホテル業界全体に衛生重視を訴えると同時に反省を求めたのである。

動画の中には、客室係が前日の宿泊客が使用した汚れたタオル1枚を用いて洗面台だけでなく、トイレの便器およびその周辺を拭く映像が含まれていた。

これでは、客室係による客室の清掃が終了した後に入室する新たな宿泊客は、清掃によって清潔であると信じて不衛生なコップや洗面ボウル、果ては便器や浴室を使うことになる。

動画で取り上げた14軒の5つ星ホテルは中国ホテル業界の模範であると花総は述べているが、それらの5つ星ホテルの衛生状況が動画で暴露された程度だとすれば、4つ星以下のホテルでは衛生状況が話にならない程度であることは言わずと知れたことである。

従って、中国でホテルに宿泊する際は、たとえ最高級の5つ星ホテルであろうとも、その衛生状態に万全の注意を払い、自衛の手段を準備することが肝要ということになるのである。

 

中国ではホテルの衛生状況に関する疑問は長年にわたって提起されてきた。

ネット上で探してみると、2015年4月にメディアの記者がチェーンホテル“如家快捷酒店”の「杭州西湖銀泰店」に身分を明かさずに潜入して、客室係が使用済みタオルで洗面ボウルやコップ、果ては床まで清掃し、トイレと洗面ボウルを同一のブラシで擦るのを目撃して、衝撃的な事実として報じ、如家快捷酒店に批判が殺到したことがあった。

2017年9月には、中国の独立評価機構である「藍苺評測」が北京にある5軒の5つ星ホテルを対象とする衛生調査を行って公表した。

対象となったのは、「北京長安街W酒店(北京長安街Wホテル)」、「北京三里屯通盈中心洲際酒店(インターコンチネンタル北京三里屯)」、「北京希爾頓酒店(ヒルトン北京)」、「北京JW万豪酒店(JWマリオットホテル北京)」、「北京香格里拉飯店(シャングリラホテル北京)」の5軒だが、いずれも著名なホテルグループに属する高級ホテルである。

ところが、調査結果は悲惨なもので、宿泊客のチェックアウト後に「完全なベッド用品の交換」および「浴槽の徹底的な清掃」、「トイレの徹底的な清掃」を行っていたホテルは皆無であったし、一部のホテルでは「バスローブの交換」を行っていなかった。また、洗面所に置かれているうがい用ガラスコップの清掃が、インターコンチネンタル北京三里屯、ヒルトン北京、JWマリオット北京の3軒では行われていなかった。

しかし、当時5軒のホテルはこの調査結果を完全に否定し、内部調査を行った結果では彼らの客室清掃に何も問題は見付からなかったと強く抗議して、問題をうやむやな形にして放置したのだった。

それから4か月後の2017年12月末に、メディアの記者が黒龍江省ハルビン市内にある3軒の5つ星ホテルで客室係が客室の清掃を行う状況を隠しビデオカメラで撮影した動画をネットに流し、客室係が薄汚れたトイレ用ブラシで茶碗を洗い、タオルを便槽の水で洗って床を拭いている事実を暴露した。

これを受けて、人々は問題を提起された3軒の5つ星ホテルはどこかということに議論を集中させたが、それ以上大きな話題とならずに忘れ去られていた。

こうした経緯を経て、それらの総集編とでもいう形で5つ星ホテルの衛生状況を暴露してホテル業界に反省を促したのが、上述した動画「コップの秘密」であった。

動画「コップの秘密」で客室の衛生状況を暴露された14軒の5つ星ホテルは、11月16日までに14軒全てが声明を発表し、動画で指摘された状況が実際に存在したことを認めると同時に、花総に対して謝罪を表明した。

これを受けて花総はメディアを通じて次のように表明した。すなわち、「当事者となった14軒の5つ星ホテルが今回の事件を広報活動に関わる問題として処理するのではなく、衛生に関わる規則を確実に実行することを希望する」と花総は述べたのだった。

一方、動画によって沸き上がった世論に背中を押された中国政府「文化和旅游部(文化・旅行部)」は当事者となった14軒の5つ星ホテルが所在する上海市、北京市、福建省、江西省、貴州省の各地方政府に対して調査と処理を命じた。

この指示を受けて、北京市ならびに上海市の関係当局は、客室の衛生問題を暴露された北京市のホテル4軒、上海市内のホテル7軒に対する立ち入り調査を実施し、関連規則の厳守を要求したのだった。