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「コスパ重視」の現実に疲れた人に勧めたい『日日是好日』の世界

原作者にインタビュー

「季節のように生きる」

——映画化とともに、いまふたたびベストセラーとなっている名エッセイ『日日是好日』(新潮文庫)。その待望の続編が『好日日記』です。前作と同じく、茶道のお稽古を続ける日々で感じたことが、穏やかな筆致で描かれています。

前作『日日是好日』は、私がお茶を習い始めて25年が経った頃に書いたものでした。今回は、それからさらに16年の年月が経っています。これだけの期間お茶を続けていても、茶室に足を踏み入れる時は緊張します。

 

この道には50年、60年の方もたくさんいらっしゃって、学ぶことに限りはありません。何年経っても終わりのない世界です。

もちろん、お稽古に行きたくない日もあります。でも、ひとたびお点前で気持ちを集中させると、心の中の雑音が静かになってくる。

そして、松風の音(煮えたお釜から立つ音)、抹茶の練りはじめに立つ強い香り、茶室の外の雨音……あらゆる音や匂いがはっきり感じられるようになります。時には、ずっと忘れていた遠い日の思い出やささやかな記憶が、ふと胸に去来することもある。本当に不思議な感覚です。

そうした静謐な時間を過ごしてお茶室を出ると、なんとも言えないさわやかな気分になります。

「ああ、今日もお稽古に来てよかった」。いつも空を見上げながら充実した気分で家路につきます。

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——本書の主題は「二十四節気」。一年の始まりの小寒から、大寒、立春、雨水、啓蟄……時節がめぐってふたたびの冬がくるまで、24の季節の移ろいが一つずつ大切に編まれています。

日本は「四季の国」とよく言われますが、細やかな変化を説明するには「春夏秋冬」だけではとても足りません。

たとえば春にしても、庭の梅一輪が香り始めた時節から、桜が咲いてのお花見、無数の花びらが散って一斉にツツジが咲き、あらゆる花々が百花繚乱となる頃……。ひとくくりにするにはもったいないくらいの「グラデーション」があります。

昔のノートを見返すと、同じ季節に一言一句同じことを記している部分がいくつもあって、人間は歳月を経ても同じ季節には同じことを考えているのだなあと、ふと感慨深くなります。

変わっていることもあれば変わらないこともあり、それでも、季節はめぐり続ける。この本の「季節のように生きる」という副題は、『日日是好日』の映画のプロデューサーさんがチラシに書いていたものをお借りしたのですが、まさに私の気持ちにぴったりの言葉でした。