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# マーケティング

シン・ゴジラからiPhoneまで大ヒットさせた「魔法の手法」

想像力に訴える「じらし戦法」
「商売の本質は、こちらが何を売りたいかではなく、お客様の目線に立つことである」。そう断言するのは、著書『売上がぐいぐい伸びるお客様の動かし方』で知られるマーケティングコンサルタント、理央周氏だ。理央氏は、大ヒットした映画『シン・ゴジラ』で、ある効果的なプロモーションが行われていたと指摘する。どんな商品を売るときにも使えるこの手法について、くわしく教えてもらった。

「チラ見せ」で期待感をあおる

現代において、商品・サービスを知ってもらうプロセスに「検索」は欠かせません。検索エンジンで調べてもらって、話題を拡散させるのに有効な方法の一つがティザー・プロモーションです。

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お客様への説明は「しっかり」すべきと思い込んでいる人も多いようですが、わかったことについて、検索しようとする人はあまりいないでしょう。むしろ、情報を断片的に「チラ見せ」すると、顧客の期待感をあおり、検索数を上げて認知度を高められる効果があります。

これはティザー・プロモーションという手法です。Teaserはからかう人、じらす人といった意味で、ティザー・プロモーションは販促の「じらし戦法」。重要な情報を最初からすべて見せるのではなく、あらかじめ計画した段階に応じて情報を小出しにします。

その段階ごとに検索する人が増えるため拡散につながり、話題を喚起することができるわけです。

この手法で話題作りに成功したのが、映画『シン・ゴジラ』です。ゴジラは古くからのマニアも多く、その分、評価も厳しくなりがちです。生半可な作品ではゴジラファンからそっぽを向かれ、大失敗の恐れがあります。

 

このような背景をふまえてシン・ゴジラ制作陣が取ったのは、原点回帰とも言うべきオーソドックスなゴジラでした。これまでとは違う斬新な面もありましたが、おおむね正統派のゴジラと言うべきビジュアルで、かつストレートな物語展開でした。

ただし、大きく違ったのがプロモーションです。

これまでのゴジラ映画は、公開までにゴジラの姿を全部見せていました。対して、シン・ゴジラの最初に公開された予告編では、ゴジラの姿をまったく見せていません。

パニックに陥って逃げ惑う人々の様子だけで、最後にゴジラの咆哮の中にシン・ゴジラのタイトルが浮かびます。その文字でゴジラ映画であることがやっとわかるだけです。予告編が劇場に流れた時は、見た人がざわつくほどのインパクトがありました。

チラシも、ゴジラの頭と「シン・ゴジラ」という題字と「ニッポン対ゴジラ」というコピーだけ。通常、映画のチラシにはキャストやストーリーなどの情報を掲載しますから、異例と言えます。

その後、さまざまなバージョンの予告編が出されるにしたがってゴジラの全身を明かしていきましたが、ストーリーについては結局、公開されるまで闇に包まれたままでした。予告編のキャストのセリフが消音されていて、全編に音楽が流れているため、余計にストーリーへの想像がかきたてられたものです。

ゴジラマニアはもちろん、それ以外の人たちも話題にしたくなるプロモーション手法でした。