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AIによってカメラマンも編集も不必要な時代がやってくる可能性

加速する映像制作の「民主化」

カメラマンや映像編集者も不要に

NHKが1990年代に制作した、「映像の世紀」というドキュメンタリー番組がある。19世紀の終わりに、フランスのリュミエール兄弟が「シネマトグラフ」と呼ばれる映写技術を確立したことで、20世紀にはさまざまな歴史的事件が映像で残されることとなった。そうした映像を集めたのが同番組で、それを象徴するタイトルとして「映像の世紀」が選ばれたわけである。

そして21世紀は、新しい「映像の世紀」だと指摘する人もいる。

 

デジタルカメラのついた携帯電話やスマートフォンが普及したことで、誰もがいつでも映像を撮影できるようになり、より多くの出来事が記録に残されるようになったからだ。あらゆる事件や事故、各種のイベントが映像化される可能性のある時代、それが21世紀だと言えるだろう。

しかし「映像の世紀」としての21世紀の進化は、これで終わったわけではない。シネマトグラフ、デジタルカメラに続くイノベーションが、私たちと映像との関係に新たな局面をもたらそうとしている。そのイノベーションとは、「AI」すなわち人工知能だ。

いよいよウィンタースポーツまっさかりの時期ということで、まずは次の映像をご覧いただいこう。

これはシンクロナイズド・スケーティングという競技で、フィギュアスケート版シンクロナイズド・スイミングといったところだろうか。大勢のスケーターが一度に氷上を滑走し、息の合った演技を見せるというもので、2000年に第1回の世界大会が開かれるなどまだまだ若いスポーツだ。だが上の映像では、きちんと競技の性質が理解されており、演技の全体像が確認できる滑らかなカメラワークを見せている。

しかしこの映像を撮影したのは、人間のカメラマンではない――AIが全自動で撮影したもなのだ。

技術を開発したのは、イスラエル発のスタートアップ企業Pixellot。彼らが販売しているAIカメラと関連サービスは、スポーツの試合を自動的に撮影し、中継用映像の編集まで行ってくれる。

簡単に仕組みを解説しよう。Pixellotのカメラは、数台のカメラを積み重ねて円筒形にしたようなユニークな形状をしていて、全体が見渡せるようにコートやフィールドなどの中心付近に設置される。

するとこの複数のカメラが同時に撮影を実施し、競技会場全体を8K映像として記録する。単純に対象となる領域を撮影するのではなく、プレーヤーやボールなど、重要なプレイが行われている場所を追跡することも可能だ。

ユニークな形状のPixellot製AIカメラ(Pixellot社ウェブサイトより)

そして撮影されたデータがPixellotのサーバーに転送され、そこでAIが適切な編集を実施し、まるでプロのカメラマンが中継しているかのようなコンテンツを制作する。必要があれば、その際に関連情報(試合の経過時間や両チームのスコアなど)の付与もしてくれる。

またそのサーバーから、制作した映像の各種端末への配信まで行われる。つまりカメラさえ設置してしまえば、あとは人間がいなくても全自動でスポーツ中継を行ってくれるのだ。

対応可能なスポーツの種類も幅広く、さきほどのフィギュアスケートに加え、サッカーやバスケットボール、アメフト、ラグビー、バレーボール、さらにはレスリングや体操など12種類に対応している。いまさまざまな職業で「AIが人間から仕事を奪うのではないか」とささやかれているが、カメラマンや映像編集者も例外ではないというわけだ。