大人の本気のコマ遊び「コマ大戦」必勝法──最強のコマを探せ!

開き系変形型、イボ型…動画で頂上対決
山崎 詩郎 プロフィール

戦わずして勝つ? 「一点静止型コマ」

ベーゴマにしろ、ベイブレードにしろ、コマ大戦にしろ、コマとコマの戦いには必ず共通していることがあります。それは、土俵がおわん形に凹んでおり、コマが中央で戦うということです。

しかしながら、全日本製造業コマ大戦第2回全国大会において、この常識を覆すアッと驚くコマが登場しました。戦わずして勝つコマです。いったいどういうことでしょうか?

「はっけよい、のこった」の合図とともにコマが土俵に投げ込まれます。普通の王道コマであれば、重力を受けながら凹んだ土俵の中央付近に舞い降りてきます。しかし、このコマは回転したまま土俵の端っこで止まっているではありませんか!

3分経っても、5分経ってもずっと端っこに留まり、中央に降りてきません。そうこうしているうちに、相手の王道コマは寿命を迎えて倒れてしまいます。

それでもこのコマは土俵の端っこでまだ回っています。相手のコマに触れることなく勝利してしまいました。

まさに、戦わずして勝つ、と言えます。このような戦術から、このコマは一点静止型コマと呼ばれるようになりました。

実はこのコマ、先端が針のように尖っているのです。コマ大戦の土俵はケミカルウッドという木材のような材質でできています。そのため、画鋲が木の板に刺さるのと同じように、一点静止型コマの針のような先端が土俵に刺さり、滑って土俵の真ん中に落ちてこなくなるのです。

一点静止型コマ一点静止型コマ 針のように尖った先端に注目

しかし、それだけでは勝てるとは限りません。相手よりも先に倒れてしまえば負けてしまうからです。そのため、一点静止型コマに必須の要件は「寿命が長いこと」なのです。

そのためにはどのような条件が必要でしょうか。

一つは、地面との摩擦を減らすために、コマを極限まで軽くすることです。一点静止型コマの平均的な重さはわずか5グラム程度で、平均的な王道コマのわずか10分の1です。

もう一つは、その5グラム程度の重さで、極限まで慣性モーメントを高め、かつ重心を下げることです。そのため、一点静止型コマの本体はリング状の形をしています。

最後の一つは、そのコマを極限まで高速で回すことです。5グラム程度の軽いコマであれば、『独楽の科学』第3章の「軸の太さ」でお話ししたように、かなり細い軸でなければ軸を手で回すときの速度の限界が出てきます。

そのため、一点静止型コマの軸は3ミリメートル程度の細いものになっています。

このように、さまざまな工夫の結果、一点静止型コマの寿命は10分程度にまで伸びました。この寿命はコマ大戦のほとんどのコマよりも長いものになります。

こうして、針による一点静止と超軽量による長寿命を組み合わせることで、戦わずして勝つ、無敵とも言えるコマが誕生しました。