大人の本気のコマ遊び「コマ大戦」必勝法──最強のコマを探せ!

開き系変形型、イボ型…動画で頂上対決
「全日本製造業コマ大戦」をご存じでしょうか? 企業や団体が、自ら製作したオリジナルコマを競わせる、大人の「ベーゴマ」ともいえる闘いです。
大学で研究する物理学者でありながら、コマの世界大会にも出場、世界の科学コマを収集し、今月ブルーバックスから『独楽の科学』を上梓したコマ博士・山崎詩郎さんに、巷で話題の「コマ大戦」について紹介していただきます。

大人の本気のコマ遊び

日本の高度経済成長を支えてきた中小企業。しかし、その元気がなくなってきているという話題に触れる日は少なくありません。どうすれば、中小企業の頑張る姿をテレビの置かれたお茶の間に届けられるか。

そこで考え出されたのが、各社が社運をかけて作成した直径わずか2センチメートルの金属製の精密コマで戦う全日本製造業コマ大戦です。

コマ大戦はベーゴマやベイブレードと同じけんかゴマ。2つのコマを土俵の上に投げて、相手を場外に飛ばすか、相手より長く回っていれば勝ち、というわけです。最大の特徴は、中小企業が技術の粋を結集して製造した超精密コマで戦うということです。

高い技術力を持った製造業者が本気で作り上げた勝つためのコマには、長く回るための工夫や、相手を倒すためのアイデアがたくさん詰め込まれており、けんかゴマの最高峰と言っても過言ではありません。本稿ではこのコマ大戦を彩るコマの戦術を紹介していきましょう。

コマ大戦におけるコマに対するレギュレーションは簡単に言うと次の2つです。

  • 直径は2センチメートル以下
  • 高さは6センチメートル以下

このように、サイズによる制限しかなく、材質や重さ、形状等はすべて自由です。

このレギュレーションの下で「強いコマ」を考えてみましょう。

最も基本的なコマの特徴は、たった8つの要素に分けられます(下図)。これらの8つの要素と強さの関係を一つ一つ明らかにしていけば、最強のコマの形も自然と姿を現すことでしょう。

このように、要素を一つ一つ検討し、それを積み重ねて大きな結論を得るのは物理学の得意とするやり方です。

コマの8つの要素コマの8つの要素

長く回る、相手とぶつかっても倒れにくい、手で回したときに回転を与えやすい、などの条件から以下のようなコマが導き出されます(実は、これは言うほど簡単ではありません。詳しい考察は『独楽の科学』を読んでください)。

  • 『本体の直径』は最大の2センチメートル(大きいほど強い)
  • 『本体の密度』はほぼ最高密度のタングステン合金(高密度ほど強い)
  • 『本体の高さ』はやや低めの1センチメートル(回す力の強い人はもっと高くてもよい)
  • 『底面の角度』は30度くらい(小さすぎると地面と接触しやすく、大きすぎると倒れやすい)
  • 『先端半径』は2ミリメートルくらい(先端半径が起き上がりの早さを決める!)
  • 『軸の太さ』は太めの6ミリメートル(細いと回しにくい、太いと速さが出ない)
  • 『軸の長さ』は適度に1.5センチメートルくらい(指の腹の長さくらい)
  • 『軸の密度』は軽くて硬いアクリル製(低密度ほど強い)

このようなセオリー通りに作られたコマはいつしか王道コマと呼ばれるようになりました。筆者が、世界コマ大戦2015の予選で優勝した際のコマもこのような王道コマでした。

当時は、「王道コマ」が強いコマの典型的な例でした。

しかし、王道コマを強く長く回せば勝てるという平和な時代は、あっという間に過ぎ去ってしまいました。これまでの単純化した議論からは思いつきもしなかった、千姿万態の異彩を放つコマが次々と誕生し、攻守多様なコマの戦国時代に突入したのです。