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ゴーン容疑者が「ニッポンの国策捜査の生贄」となるまで

国際紛争に発展する可能性も

日産の危機感

日産CEOのカルロス・ゴーン容疑者が、誰のどのような思惑で被疑者となり、誰の指示によって逮捕に至ったかという過程は、まだわからない。連日の報道で、権力者となったゴーン容疑者の悪辣ぶりが、一方的に報じられているばかりだ。

ただ、ハッキリしていることがある。これは国策捜査である。

自動車産業の雄である日産-三菱自動車連合を、経産省(政府)は守りたかった。ゴーン容疑者の“変節”によってこの連合がルノー傘下に入る危険性を、日産のプロパー役員と幹部は排除したかった。内部告発を受けた検察は、「司法取引」という道具を使って官民の意向に沿いたかった。

政官民が一体となって、かつては日産の救世主だったゴーン排除に動いた。それに使われたのが金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)という容疑である。

実際は、5年で約100億円の報酬がありながら有価証券報告書には約50億円と過小に報告していた――。

 

これが脱税なら大きな罪だが、税務申告の数字ではなく、「高収入を表沙汰にしたくなかった」というだけの動機なら、それほどの悪質性は感じられない。有価証券報告書は投資家にとって大事な指標だが、「役員報酬」の多寡が投資活動を左右するものではない。検察は、特別背任や横領を視野に入れた入り口として、これを事件化させた。

そうしないではいられない国策とは、ルノーと日産の統合阻止である。99年、ルノーが経営参加したことにより、日産の資本は厚みを増し、来日したゴーン容疑者が、徹底的にムダを省いた改革を断行、「V字回復」は成し遂げられた。

ルイ・シュヴァイツァールノー元CEOと塙義一元日産自動車社長。1999年3月27日に締結された日産とルノーの提携は、日本とフランスの企業間で結ばれた初アライアンスだった。(Photo by gettyimages)

しかし、日産が復活を遂げたのに比して、「親」となったルノーは成長せず、今や、生産、技術、資本、利益と、あらゆる面で日産が優位に立ち、ルノーを支えている。だが、ルノーにとっては「子」である状況に変わりはなく、マクロン大統領は資本統合して完全な傘下企業にすることで、フランスの雇用の改善などに役立たせたかった。