陽だまり保育園(写真監修:リマインダーズ・プロジェクト 後藤勝、写真撮影 鬼頭志帆)

子ども同士のケンカを見守れるか? ある優良保育園の思想と実践

職員が休んでも回る。人件費比率も高い

「働きやすさ」は給与が高いだけでは実現しない。保育士の人数がギリギリでは過重労働に陥ってしまう。

ただ、給与額と人員体制はトレードオフの関係にあり両立が難しい。というのも、人件費が保育士の配置基準に沿って保育園に支払われているため、保育士を多く雇えばその分、一人当たりの賃金が低くなってしまうからだ。

そうしたジレンマを多くの保育園が抱えるが、東京都江東区にある「陽だまり保育園」は人件費をかけることで賃金面の処遇に加えて、ゆとりある人員体制を実現している。

 

子どもに寄り添った保育の実践

「陽だまり保育園が大事にしていることは、ゆっくりと子どもたちの発達を支える保育。子どもの発達の筋道に沿ってのびのび成長できる保育。一人ひとりに心を寄り添える保育です」――。

東京都江東区にある陽だまり保育園は、NPO法人KOTOともそだちネットが運営しており、江東区の株式会社・NPO法人の認可保育所のなかで2015年度の保育者人件費比率(園長などを除いた現場の保育者や調理員等の人件費比率)が最も高い65.5%だった。これは、23区内でもトップクラスに位置している。

もともとは認可外保育所だったが、現在、認可保育所を2ヵ所、東京都が独自に認可している「認証保育所」を5ヵ所運営している。

園児が次々と登園する午前9時頃、陽だまり保育園を訪れると、4歳児クラスでは、和やかな雰囲気のなかで子どもたちがブロックやおままごと、折り紙など思い思いに遊んでいる。

保育士の膝の上でブロック遊びをする子もいる。発達がゆっくりで甘えたいタイプだそうだ。その子をしっかりと受け止められるよう、職員が加配(かはい)されている。

保育士と子どもが「1対1」でゆっくり食事する

10時半を回ると、0歳児の食事が始まる。各クラスを回って筆者が目を見張ったのは、0歳児クラスでは保育士と子どもが1対1で食事をしていることだ。

0歳児の配置基準は子ども3人に対して保育士1人のため、一般的には保育士が一人で3~4人の赤ちゃんに離乳食を食べさせることはよくある風景だ。すると当然、機械的にスプーンで口にご飯を運ぶだけで精一杯の、まるで餌やり状態になってしまう。

陽だまり保育園では、0歳の子ども1人に保育士1人がついて、ゆっくり、その子のペースに合わせて「これも、食べてみよっか」「わー、すごいねー。上手に食べられたねー」と優しく声をかけながら食事が進められていく。子どもが自分でコップに手を添えられるようになると、保育士1人で子ども2人の食事介助となる。

0歳児クラスは子ども9人に担任が3人つく。うち2人は経験20年クラスのベテランだ。それに加えて、0~2歳児には担任以外の非常勤職員が合計5人いて必要に応じてクラスに配置されるため、1対1の食事が実現できる。

多くの保育園が「子どもに寄り添った保育」を掲げるが実際にできる保育園は少ない。しかし、陽だまり保育園では、まさに、一人ひとりに寄り添った保育を実践している。