医者によって、病院によって治療法はここまで変わる

10軒あれば10通りある
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大学ごとに流派がある

医療機関によって治療内容が違う理由には、病院の規模や立地、専門分野の違いなども挙げられる。しかし、それだけではない。前出・室井氏が解説する。

「アメリカの医学雑誌『ランセット』で、日本の大学病院の医局制度が原因のひとつだと指摘されたことがあるのです。

日本は大学の医局ごとに医療方針の流派があり、それが師弟関係の中で受け継がれていく。その結果、ある大学の医局が特定のメーカーの薬を使っていると、その出身者が開業した病院などでも、同じ薬を使うという現象が起きる。

大学ごとに医療技術を切磋琢磨できるというメリットを認めつつ、医療機関によって治療行為のバラツキが起き、それが治療結果の差にもつながっていると指摘しているのです」

 

むろん薬だけではない。胃がんや大腸がんだと診断された場合、仮に手術をするということになっても、開腹手術か腹腔鏡手術か、どちらを行うかは医師、医療機関によってまったく違う。

「若手の場合、開腹手術の経験が少ないという消極的な理由で腹腔鏡手術を提案する医師も多い。病院によっては、腹腔鏡の実施数を積み上げたいので、方針として、腹腔鏡手術を優先するところもあります」(消化器科専門医)

それでも、「五大がん」などの比較的メジャーな疾患であれば、ある程度治療は均質化されている。より注意が必要なのは、症例が少ないがんだ。医療法人社団「進興会」理事長の森山紀之医師が話す。

「舌がんになったある人のケースでは、関西の病院で診察を受けたところ全摘手術がいいのではないかと言われた。そうすると、当然しゃべることはできなくなります。

その後、東京のがん専門病院で再度診察を受けたところ、手術と放射線治療を組み合わせた方法を提案されました。味覚などの機能と深く関わる部位は放射線で治療し、できるだけ舌を残す方法です。

舌がんのような頭頸部のがん患者は、地方の普通の病院では病棟に2~3人ぐらいということが多いですが、国立がん研究センター東病院などでは、頭頸部の病棟だけで50床ある。

珍しいがんの場合は、症例数の多い病院のほうが治療の選択肢は広がるという面はある」

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がんだけでなく、高齢者と切っても切れない疾患であるリウマチも注意が必要だ。

「亀戸佐藤のり子クリニック」院長の佐藤のり子医師が話す。

「リウマチは専門医がガイドラインに基づいて治療を担当しても、内科と整形外科で、まったく治療のゴールが違うのです。関節が痛んだ場合、整形外科の専門医は、QOL(生活の質)を尊重し、手術で人工関節に置き換えるなどの手法を考えます。

一方で内科医は薬物療法を重視するのです。どちらがベストかは、患者さんの年齢や希望によって異なりますが、リウマチの治療は最初にどの科の医師を受診するかで、大きく変わるのです」

医者はあたかも、その治療法以外に道はないように話す。しかし、実際には自分が処方したことがある薬、やり慣れている手術を提示しているだけで、他に選択肢はいくらでもあり得る。

それを知ったうえで、医師の説明を聞かないと、取り返しがつかないことになる。

「週刊現代」2018年11月17日号より