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医者によって、病院によって治療法はここまで変わる

10軒あれば10通りある

高血圧の許容範囲も違う

「同じ病気でも、たとえば10軒の病院に行ったら、10軒とも治療法や処方する薬は違うのです。

病院内でも、医師によって天と地ほど違いがある。その患者さんの血圧が160だったとして、薬を出さない先生もいれば、2つも3つも出す先生もいるのです」(「長尾クリニック」院長の長尾和宏医師)

どの医師、病院でも、同じ病気であれば同じ治療法になる。無意識のうちにそう思ってはいないだろうか。だが、実際には大きく違う。

 

3年前、都内在住の斎藤和雄さん(75歳・仮名)は、血圧が160台後半になり、地域の総合病院を受診した。そこの医師からは「できれば130以下に収まるのが望ましい」と言われ、降圧剤であるカルシウム拮抗薬と利尿剤を処方された。

1ヵ月ほど経ち、血圧は150台に下がったが、医師からさらに、降圧剤のARBを処方された。その頃から、斎藤さんは原因不明のめまいやふらつきに悩まされるようになった。自宅の階段を昇っていて、ヒヤッとしたことも何度もあった。

ためしに地元の個人クリニックを受診したところ、「血圧は高齢者の場合は少し高くても問題はないんです。『年齢プラス90』ぐらいは許容範囲です」と医師から言われた。

そこで3種類の薬をすべてやめてみたところ、ふらつきなどはピタリと止んだ。いまのところ、別の疾患なども出ていないという。

医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が話す。

「高血圧で病院に行った場合、日本ではカルシウム拮抗薬やARB・ACE阻害薬、利尿剤などが処方されることが多い。その中で医師は大抵、自分の好みだったり、あるいは同僚医師が勧める薬を処方するのです」

前出・長尾氏もこう続ける。

「薬の多剤投与といって、6種類以上の薬を服用することは身体にとってよくないということをいまだに知らない、信じようとしない医師もいます。薬をたくさん出せば出すほど、いい仕事をしたと思っている医師も多いのです」

薬の処方の違いには、医師本人の勉強不足という原因もある。認知症薬や鎮痛薬など、欧米ではすでにほとんど使われなくなっている薬もある。

それらを記した海外の論文や、厚労省の所管機関「PMDA」(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)がまとめている副作用の改訂情報などを、多忙を理由に確認していない医師は少なくない。