ケンタッキー・フライド・チキン社長が考える「褒める」経営哲学

大塚英樹の「成功するトップの覚悟」⑦
大塚 英樹 プロフィール

「褒める」ことで従業員主体の経営に

近藤が大事にしていることは「褒める」こと。

仲間がお互いを称賛し合う文化を育むことに力を注ぐ。褒める活動だから経済的意味はない。しかし、称賛されることで努力したんだなと実感できる。

 

いかに小さな成果であっても、目に見える形でそれを示し、従業員に成果が得られていることを実感できるようにして情熱を喚起しているのだ。  

では、具体的に称賛活動をみてみよう。代表例は、店舗管理・運営の資格を持つ従業員の感謝の会「シフトマネージャーコンベンション」だ。

シフトマネージャーとは、永年勤続者を含む時間帯責任者(アルバイト)で、約3700人(2017年3月現在)いる。  

店の活性化はシフトマネージャーのモチベーションで決まる。マニュアルを基本としつつ、個々の社員の自分なりの考え方、自分の感覚、自由な発想がお客を惹きつけることになるからだ。近藤は言う。

感謝の気持ちを伝え、そのうえで、KFCの理念や当社の現状、方向性を共有してもらいたいという考えから始めたのです」  

photo by iStock

近藤は、他にも表彰制度を多く新設した。卓越したアイデアを提案した人に与える「おいしさ、しあわせ活動賞」、毎月、店で一番優秀な人を表彰する「セレブレーティングチャンピオン」、日々の中で従業員が素晴らしいと感じた活動を行った従業員に贈る「チャンピオンカード」。  

特筆すべきは、素晴らしいお客対応をした人に贈る半期に一度の「スーパーホスピタリティ賞」だ。

毎回11名を選出し、表彰会とディナーパーティを開催、2日目にはディズニーアカデミー研修に招待する。受賞者はお客に感謝され、喜ばれた事例に基づいて選出される。  

例えば、受賞対象となったお客のお礼の言葉。

「1歳の子どもを連れてお店に入ると、女性の店員さんが子どものアレルギーの有無を確認したうえ、ビスケットを包んでくださった。また、椅子を退けてカートの置き場も作っていただき、『何かあればお声をかけてください』とまで言ってくださった。嬉しかった」

「父が会計時に『カードの登録ができなくて困っている』と伝えると、店長さんが客席で丁寧に登録の手順を教えてくれた。その間、温かいコーヒーをいただき、父は喜んでいました」など。  

こうした事例を共有すると、他の店の従業員もやってみようとトライするという。  近藤の危機感からくる「従業員主役の経営」への挑戦は続く。

近藤 正樹(こんどうまさき)
1955年神戸市に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業後、1978年三菱商事に入社。1985年コロンビア三菱商事。食品本部コーヒーマネージャー、伯国(ブラジル)三菱商事社長、生活産業グループCEO補佐(人事担当)を経て、2014年から日本KFCホールディングス代表取締役社長。