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負けを承知でAIに挑む気か…ここがおかしい「大学の国語入試改革」

定まった「共通テスト」の方向性

現在の「センター試験」に代わり、2021年からはじまることになっている「大学入学共通テスト」の「国語」では、近代日本の国語教育を根本から揺るがすような大転換が図られている。具体的にどう変わるのか、プレテストに基づく第一報は既にお伝えした(2017年8月25日記事「国語の大学入試問題が、来年からトンデモないことになる予感」)。

しかし、表やグラフ、また契約書など、これまでありえなかったような「資料」が問題文の代わりに登場するというこの改変が、一体将来なにをもたらしうるかについては、まだ世間の議論は熟していないように思われる。

去る11月10日には、「本試前最後」とされるプレテストが実施された。それまでのプレテストや参考問題に比べてより改善、洗練された面もあるが、見る限りまだメリットよりデメリットの方が多い。これでは改変の本旨を十分反映できないまま、「ゆとり教育」の二の舞を演じることになりかねない。

なにしろ、AIとの職の奪い合いが起きようという時代に、このままではあたかもAIに負ける子どもをわざわざ育てようとしているかに見えるからだ。

自動翻訳機がますます精度が高く手頃になる時代に、日常レベルの英会話に注力するのに似た改変のための努力がなされようとしているのではないか。以下、今回のプレテストの問題点を示し、今後の議論に供したい。

 

国語の「大問題」

まず、「国語」。新たな「大学入学共通テスト」(以下、「共通テスト」)が従来の「センター試験」と異なる点を確認しておくと、3点ある。

マーク式だけでなく、〈記述式〉が導入されること。「センター試験」が、評論・小説・古文・漢文の計4題だったのに対して、「共通テスト」では、新たに1題、〈実用文(資料読解)〉が加えられるということ。そして、1つの大問における問題文が複数になることだ。この〈テキストの複数化〉は、古文・漢文を含めこれまでのプレテストのすべての大問に適用されてきた。

残りの2点に関しては、前回までは実用文を本文とする記述式設問の大問が1題追加されるという形式でクリアされてきたが、今回のプレテストでは、評論問題が記述式設問になり、実用文はマーク式になった。この変更は妥当なものだ。評論で主張されていることを、一度自分の頭で咀嚼して、もう一度別の文章としてアウトプットする。ここで文章が真に理解しているかを測ることができるからだ。

そもそも、前回までのプレテストのように、新傾向2点を一つの大問でクリアしようというところに無理があった。実は小説こそが記述式には最もよいだろうと思われるが、「共通テスト」規模では実際的ではないだろう。この点は後述する。

さて、もう一つプレテストが変わった点として、実用文型の問題で使用される文章のレベルが上がったということがある。前回までは実用文の問題で使われていた本文と言えば、駐車場の契約書、高校の生徒会規約、自治体の広報など、無味乾燥なただの資料だった。

特に、高校の生徒会規約を大学入試で読ませる意味が分からないし、駐車場の契約書も自治体の広報も、大学進学と関係なく万人が読めなければならないものではないか、と首を傾げざるを得なかったが、今回出されたのは著作権法に関するもので、読みごたえがある。ここで新しい知識を得ることもできるし、本文とともに提示されている表も、そもそも原著で用いられているもので、つながりに無理がない。

前回までのプレテストでは、おそらくは無理して複数テキストを用意するために、ある話題について数人の高校生が会話する会話文が使われていたが、これは本当にテストを作るためだけに作文された、読んでいて悲しくなるほどつまらないものばかりだった。

幸い会話文は、現代文の範囲では消滅した。使用されている文章は、既に社会一般に向けて発表された、署名入りものだけである。その点では、より社会に密接した「実用」的な問題になったと言うことができる。

しかし、問題も残されている。一つは問題文に関して、もう一つは採点基準に関して。どちらもこのままでは「読解力」においてAIと対抗して負ける方向へ向かう。