アイリスオーヤマが「革命的価格」でテレビを販売できる舞台裏

なぜ他の家電メーカーにはできないのか
加谷 珪一 プロフィール

このような無理な販売を続けていると、高い価格で購入してしまった一部の消費者は必要以上の出費を強いられるので、その後の消費意欲が減衰する。つまり需要の先取りが発生してしまい、消費全体に対してよい影響を与えない。

ちなみにアイリスオーヤマの製品は、当初から適性水準の利益を載せた価格設定なので、時間が経過しても大きく価格が値崩れすることはない。家電が特別な製品ではなくなった今、どちらの価格戦略が時代に合っているのかは言うまでもないだろう。

 

現状維持が最優先

こうした状況は筆者などに指摘されるまでもなく、大手メーカー自身が最もよく理解しているはずである。それにもかかわらず、なぜこのような製品戦略、価格戦略が維持されるのだろうか。最大の理由は、組織が現状維持を強いられていることに尽きるだろう。

各メーカーは開発や販売の体制に関する詳細な情報を明らかにしていないが、大手メーカーはアイリスのような新興メーカーと比較した場合、人員過剰となっている可能性が高い。これは韓国メーカーや中国メーカーとの比較でも似たような結果になると考えられる。

コモディティ化した製品を開発・販売するというビジネスでは、組織は可能な限りスリムにしなければ、十分な利益を確保できない。大規模なリストラを実施したシャープやソニーはかなり人員が絞られたが、それ以外の日本メーカーは、まだ多くの社員を抱えている。

こうした間接コストを支えるために、無理な販売戦略を続けていても、いつか限界がやってくるだろう。

新興メーカーのアイリスが、AV機器にも本格参入してきたという現実は、従来型の市場構造が限界に達しつつあることの象徴といってよい。昭和型の製品戦略や価格戦略との決別は待ったなしである。