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高額だけど非科学的、がん「民間療法」に潜むワナ

エビデンスがない治療法も

注射1回で300万円

「2年前にNK細胞療法を受けました。1回の治療費は細胞培養の技術料が約30万円。他に血液の管理費として5万円ほど。計35万円の治療を3ヵ月かけて6回行いました。検査費用などを含めると250万円近くかかりました」

こう語るのは肺がんを患って、免疫細胞療法で有名なクリニックで治療を受けた山口悟さん(71歳・仮名)だ。

NK細胞のNKとはナチュラルキラーの略。極めて強いリンパ球の一種で、これを体外で増殖、活性化させて体に戻すことで、がん細胞を攻撃するという触れ込みだ。

ところが6回1クールの治療後に検査してみると、肺がんは小さくなるどころかむしろ広がっていたため、山口さんは治療をストップした。その後、抗がん剤治療に切り替え、奇跡的に回復した。

保険が適用される標準的治療では治る見込みが少なく、効果のはっきりしない自由診療や民間療法に手を出すがん患者があとを絶たない。

とりわけ免疫療法は、免疫治療薬オプジーボの開発に携わった本庶佑・京都大学特別教授がノーベル賞を獲ったこともあり、注目を集めている。

「問題なのはインチキなものも含めて、免疫療法が一括りで盛り上がりを見せていることです」(東京オンコロジーセンター代表でがん薬物療法専門医の大場大氏)

驚くほどの効果を喧伝している免疫療法は枚挙に暇がないが、その大半は到底、科学的とは言えないものだ。

 

具体的に見ていこう。樹状細胞ワクチンとペプチドワクチンを組み合わせた治療法は「樹状細胞でがん細胞の壁を破壊し、ペプチドでその内部を叩く」という触れ込みだが……。

「効果があるというエビデンスはまったくありません。治療として確立されてないのに、クリニックが勝手にやっているのです」(日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授・勝俣範之氏)

自由診療で行われている免疫療法は、おおむね副作用がないものが多い。それは主作用、つまり効果が薄いということの裏返しだが、その間にも病気はどんどん進行していく。にもかかわらず患者へ大きな経済的負担を強いる。

「自由診療の免疫療法は、医者の言い値ですから、医療費は高額になります」(滋賀医科大学臨床腫瘍学講座特任講師・寺本晃治氏)