# アート

日本人は知らない、世界中の金持ちが「アート」を買う本当の理由

政府に知られることもなく売買している
岡村 聡 プロフィール

どこの政府に知られることもなく売買できる仕組み

シンガポール政府も、所有者を問うことなくフリーポートに資産を持ち込むことを認めています。

そのフリーポートは建物全体が1メートル以上のコンクリートでおおわれ、建物に入るまでに生体認証など7つのチェックを受けなければならず、内部も1つの扉で3.5トンもある分厚いドアで仕切られています。

さらに、マシンガンを持った私設の警備兵が守り、火災に備えて内容物にダメージがない窒素ガス噴射装置が張り巡らされているなど、あらゆるセキュリティを備えた究極の金庫となっています。

地下には冷蔵庫大のボックスに100億円以上の金塊が納められるようになっており、このボックスが1部屋に数百も並び、さらにそうした部屋がいくつもある様子は壮観でした。

 

一度、資産を持ち込めば所有者の情報は一切外部に出ませんから、どこの国の政府に感知されることなく高額の資産を売買できます。シンガポールのフリーポートには大手オークション会社のクリスティーズがフロアを所有しており、上記のダヴィンチのサルバトール・ムンディも、展示される予定のルーブルアブダビ美術館に移送する前に、現在はこちらに所蔵されていると担当者が話していました。

ルーブルアブダビ美術館〔photo〕著者撮影

権力者の資産隠しや脱税の温床となると考える人も居るかもしれませんが、スイスにある施設は100年以上の歴史を誇り2度の世界大戦など数々の悲劇の中、所蔵されている資産を守り抜いてきました。

ナチス政権により迫害を受けたユダヤ人に象徴されるように、資産家にとって時の政権によるリスクからも守ってくれる施設です。

シンガポール政府としてもこのような施設があることで、低い税率や少ない規制を求めて流入した富がさらに増大し、活発に取引されることにつながると期待しているのでしょう。普段の生活から想像もしない施設に興奮するとともに、美術品がいかに人類の歴史において大きな役割を果たしてきたのかについて思いを新たにしました。