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人生に「親友」は必要ないのか?大ヒット本『友だち幻想』への違和感

人が学校へ行く意味を考える

距離感は大事だが、親友も大事

2016年に56歳で大腸がんで亡くなった社会学者・菅野仁氏の名著だ。菅野氏は評者と同じ1960年生まれなので、『友だち幻想』本書の内容は世代的にも共感を覚える。

菅野氏は『友だち幻想』というタイトルをつけた意味についてこう記す。

<友だちが大切、でも友だちとの関係を重苦しく感じてしまう。そうした矛盾した意識をつい持ってしまうことはありませんか。

 

こうした問題を解きほぐして考え直すためには、じつは、これまで当たり前だと思っていた「人と人とのつながり」の常識を、根本から見直してみる必要があるのではないかと私は思うのです。

タイトルに「友だち幻想」とつけたのもそのためです。

知らず知らずのうちに、私たちはさまざまな人間関係の幻想にとらわれているのではないか。固定した思い込みにとらわれているために、ちょっと見当はずれな方向に気をつかいすぎて、それで傷ついたり途方に暮れたりしているのではないでしょうか。

だから、今まで無条件にプラスの方向、無条件に良いものと考えられてきた「身近な人とのつながり」や「親しさ」のあり方について、ここであらためて腑分けをして、きちんと考えてみようと思うのです>

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本書は中高生を主たる読者に想定して書かれているが、社会人にも十分に通用する内容だ。重要なのは、他者が自分を100%理解することはないという現実を踏まえることだ。

<価値観が百パーセント共有できるのだとしたら、それはもはや他者ではありません。自分そのものか、自分の〈分身〉か何かです。

思っていることや感じていることが百パーセントぴったり一致していると思って向き合っているのは、相手ではなく自分の作った幻想にすぎないのかもしれません。

つまり相手の個別的な人格をまったく見ていないことになるのかもしれないのです。

きちんと向き合えていない以上、関係もある程度以上には深まっていかないし、「付き合っていても、何かさびしい」と感じるのも無理もないことです。

過剰な期待を持つのはやめて、人はどんなに親しくなっても他者なんだということを意識した上での信頼感のようなものを作っていかなくてはならないのです>

このことは、学校、会社、役所の人間関係における基本中の基本だ。

ここから、人間関係においては、適切な距離感が重要になることを菅野氏は強調する。