2016年度からは官邸挙げての待機児童対策ということで内閣府が所轄する「企業主導型保育」も創設され、現在、急ピッチで拡大している。
企業主導型保育は、事業所内保育と似た性格があり、従業員の福利厚生を目的として作られる。定員の5割の地域枠が設けられ、認可保育所並の運営費が支払われる。
企業主導型は、税金や保護者が払う保育料から成る「委託費」ではなく、企業拠出金からの運営費だが、委託費並の費用が賄われる。
「委託費の弾力運用」は私立の認可保育所が対象となっているが、企業主導型をはじめ認可保育所以外は「委託費の弾力運用」の対象外で、驚くべきことに、費用の使途について、なんの縛りもかけられていない。
そればかりか、税金ではなく拠出金ということで福利厚生の意味が強く、雇われている保育士の賃金については「企業秘密」とされるため、人件費比率や給与額の公開も求められない大きな欠点がある。
たとえ不正受給問題を起こしたとしても、「企業秘密」の名の下に、不正額は公表されない。
すべては待機児童の受け皿をなんとしてでも増やすため。企業主導型保育は、内装リフォームなどの施設整備費約1億円を最初に支給するという異例の策をとっているため、その整備費欲しさに保育に関して素人の企業までもが群がった。監査が入ると、7割もの施設に問題があると指摘を受けた。
その結果、集会が行われた直前、世田谷区では、保育士の一斉退職によって企業主導型保育所が11月に入り突然休園する事態となった。
報道によれば保育士への未払いもあったとされる。これこそ、人件費分の運営費にきちんと縛りをかけないことの顛末ではないか。
急ピッチで基準の緩い保育施設に頼ることへの波紋は広がり、保育士たちが「きちんと認可保育所を作るべき」と強調した。
集会の最後をしめくくったのは、保育士による「3匹の子豚」のミニパロディ。
「わらの家のように、すぐに吹き飛ばされる保育園はイヤだー!」
「レンガのような温かい、大人も子どもも安心できる認可がいい!」
これらを実現するには、やはり「委託費の弾力運用」に縛りをかけることが必要不可欠ではないか。
保育の規制改革の一丁目一番地は「委託費の弾力運用」と「営利企業の認可保育への参入」だった。これ以上の規制緩和を許せば、保育士が疲弊するだけでなく、子どもの命も奪いかねない。政策転換は待ったなしの状況だ。