誰でも必ずモノにできる「理系の英語」学習のために絶対必要なこと

物理学者が「英語」の本を書く理由
志村 史夫 プロフィール

英語なくして、研究の道はひらけない

アメリカ移住のoccasionは意外に早く、Bellの言葉に感動した5年後に訪れた。

私が1979〜1981年に書いた論文が1982年にアメリカ・デトロイト(Detroit)で開催された「第1回超LSI科学・技術国際会議(The First International Symposium
on Very Large Scale Integration Science and Technology)」の組織委員の目にとまり、会議初日の招待講演者として招かれたのである。

私の講演題目は“Behavior and role of oxygen in silicon wafers for VLSI”、講演時間は30分だった。この講演の後、私はアメリカ、ドイツの複数の研究機関から勧誘を受けた。結果的に、私は翌1983 年の春、当時、世界最大の半導体結晶の研究所といわれたモンサント・セントルイス研究所に、アメリカに永住するつもりで移籍したのである。

そしてその4年後、こんどはノースカロライナ州立大学に教授として引っ張られ、転職することになる。アメリカの大学教授は日本の大学教授と比べるとはるかにきつい仕事ではあるが、大学に移った初年、私には自由になる時間が多かった。とても幸運なことに、私に半導体シリコン結晶に関する専門書の執筆依頼がAcademic Pressからあったのは、まさにこのときだった。Academic Pressといえば、学術書出版社の中では一流中の一流である。

私はこの幸運に狂喜し、生涯の大作となる書Semiconductor Silicon Crystal Technologyを書き上げた。そして、その10年前、Bell研究所で思った「いつか自分に研究成果を1冊の本にまとめるようなoccasionが訪れたら、このBellの言葉を掲げたい」を実現したのである(下図)。

志村史夫Bell の言葉を掲げた自著

永住のつもりで渡ったアメリカではあったが、私は結局、いろいろと考えるところがあって(その理由は本書の内容と関係ないので省く)10年半後の1993 年秋に日本に帰って来た。それ以降は半導体研究の第一線から引退し、興味の赴(おもむ)くまま自分自身のpaceでさまざまな分野の“道楽的研究”(しかし、すべては半導体研究を原点としている)を続けている。

帰国後、およそ10年が経ったとき、「エレクトロニクス50年史(“An Electronics Division Retrospective(1952-2002)and Future Opportunities in the Twenty-FirstCentury”)」がまとめられた。

「エレクトロニクス50年史」において、第一に重要な出来事は1948年のトランジスター(transistor)の発明であるが、こんにちの「エレクトロニクス文明」に直結するのは1952年の集積回路(Integrated Circuit: IC)の予言、1959年の出現である。

上記“1952-2002”の、“1952”はその年であり、“2002” はElectrochemical Society(ECS)の創立100周年記念の年だった。

この「エレクトロニクス50年史」のFigure 1を飾ったのは、当然のことながら「エレクトロニクス文明」の嚆矢(こうし)であるトランジスターを発明したショックレイ(Shockley)、バーディーン(Bardeen)、ブラッテン(Brattain)の3人(1956年にノーベル物理学賞受賞)だった。以降、「エレクトロニクス」の発展に貢献した研究者とその業績が次々に紹介されているのであるが、まことに光栄なことに、Figure 25に私を登場させてくれている(下図)。

志村史夫左側が筆者。「エレクトロニクス50年史」より

これは、上記の招待講演の論文“Behavior and role of oxygen in silicon wafers for VLSI” や書籍Semiconductor Silicon Crystal Technologyが評価された結果であった。

どんな分野であれ、その分野の研究史がまとめられる際に、自分の名前が登場するというのはこのうえなく嬉しいことであり、光栄なことである。しかも、それを存命のうちに見られるとは! これも、私が研究論文を英語で書いてきたからである。

私は、若い研究者、また研究の道を志す学生諸君に、心から申し上げたい。

それぞれの分野の研究史に遺るような研究をしていただきたい(拙著『一流の研究者に求められる資質』牧野出版、2014)。そして、そのような研究を世界にappealす
るためには、どうしても国際言語である英語を使わなければならない。

そのための「英語力」は、勉強・努力次第で必ず身につけることができる。