偽名の名刺を何枚も使い分ける、自衛隊「謎のエリート集団」の正体

渋谷・新宿・池袋・品川のアジトに出勤
週刊現代編集部

「触らないほうがいい」

石井氏は、海外で別班が活動している事実を突き止めるため、取材を続けた。しかし、別班は自衛隊にとってタブーであり、取材は難航した。陸上自衛隊の元将官にこの話題を切り出した際も、厳しい反応があった。

「『別班』という言葉を聞くと、突如厳しい表情に変わりました。さらに質問をすると『お前(石井氏)は、私が現役時代からずっとマークされてきた。電話もメールも盗聴されていると思ったほうがいい。別班には触らないほうがいい』という脅迫を受けました」

5年半の取材を経て、石井氏は「陸自、独断で海外情報活動 首相、防衛相に知らせず 文民統制を逸脱 自衛官が身分偽装」という記事を執筆した。'13年11月28日の朝刊用に配信されている。

これを受け、国会でも議論がされた。しかし、小野寺五典防衛大臣(当時)は、「そのような組織はこれまで自衛隊に存在しておりませんし、現在も存在しておりません」と答弁している。

その後、石井氏は直接、小野寺大臣と話す機会があった。

「小野寺さんは本当に知らないようでした。ただ別れ際に、『長くても2年くらいしかいない大臣になんて言うはずがない。そういうことかなあ』と言っていたのです」

別班は、今も昔も存在しないものとして扱われている。記事を出した後、音信不通になった取材相手が何人もいた。それでも、取材を続けられたのは、別班経験者の本音を聞いていたからだ。

 

「長く付き合っている別班OBが居酒屋で、『別班に入って自分が変わってしまった』と、ぽろっとこぼしたのです。心理戦防護課程では危険な教育を受け、身分を偽りイリーガルなことをしなければならない。ストレスはすさまじいものです」

別班員は、何があっても動じないように訓練される。素の自分を出すことができなくなり、心を壊す者もいる。家族にすら心の壁を作ってしまい、家庭を継続できない人も少なくない。

「別班は、存在すら認められないのです。ある経験者は、『別班の全貌を明るみに出して、潰してほしい』と私に言いました」

自衛隊情報部隊のトップエリートたちを犠牲にしながら、自衛隊の秘密組織「別班」は今日も活動を続けている。

(週刊現代2018年11月17日号「自衛隊の秘密スパイ組織「別班」とは」より)