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娘に好かれたい父親に、心理学が教える「娘のトリセツ」

日常に潜む心理学の「種」に学ぶ

人にかかわるところすべてに心理学あり

心理学というと皆さんは、どのような仕事を連想されるだろうか。

たとえば学校のスクールカウンセラー、心のケアに従事する臨床心理士などが頭にうかぶかもしれない。

しかし悩みや心理的問題を抱える人の相談にのることだけが心理学の仕事ではない。人の一生を考える発達心理学に始まり、社会心理学、化粧心理学、交通心理学、と「人にかかわるところすべてに心理学あり」である。

 

こうした様々な心理学がある中で、私が関心をもっているのは、ごくありふれた日常生活の中にある疑問に注目しそれを心理学の手法によって解明する研究である。研究室に閉じこもって実験や研究をするのではなく、今の社会のニーズや問題点を心理学によって明らかにし、その成果を社会に発信するインターフェイスとなる研究者を目指している。

そのためには、今の時代のニーズやトレンドに敏感になり、学生と話をし、家族や友人と美味しいものを食べたり旅行したりというごく普通の日常を大切にしている。なぜならば日常は心理学研究の「種」の宝庫であるからである。では筆者が行ってきた2つの研究を紹介したいと思う。

娘の「父親への好感度」の決め手とは?

大学院に入学して最初に行ったのは、「娘からみた父親の魅力」研究であった。

研究のきっかけは、古本屋で偶然買って読んだ『キャリア・ウーマン 男性社会への魅力あるチャレンジ』(1978年)という翻訳本だった。その本は、まだ性別役割分業意識が根強かった1970年代後半のアメリカ社会の中で、中間管理職の役職に就き活躍する二五人の女性にインタビューしたものであった。

とくに関心をもった記述は、彼女たちが女ばかりのきょうだいの長女で、父親から性別役割による躾を受けて育ってこなかったと述懐していたことだった。

読後、自分自身も三人の女きょうだいの長女であり、父親から〝女らしくしなさい〟とか〝女性は結婚して子どもを産むことが幸せだ〟といった性別躾を受けてこなかったことに気づいた。また、私の父親は短気で理想の男性像からほど遠い存在だったが、友人の中には父親が理想の男性と公言する人もいて驚いた。

そこで若い女性たちが、父親をどのように見ているのか、父親は娘のキャリア形成や異性観にどのような影響を与えているのかを知りたいと思い研究を始めた。

研究では最初に娘が、「人間的魅力」「異性としての魅力」「両親間の親和」という三側面から父親を評価していることを明らかにし、次に魅力的で好感がもてる父親はどんな父親かを分析した。

その結果、娘と同性である母親と父親の夫婦関係が良好であり、自分も両親のような夫婦になりたいという意識が強い場合に、娘は父親に好感をいだいていることが明らかになった。

つまり父親が母親を大切にしているか否かによって、娘の父親への好感度が左右されるのである。

この結果をみて自分が父親にあまり好感を抱いていない理由がわかった気がした。亭主関白であった父親は、よく母親を怒鳴りつけており、自分の理想とする夫婦像からはかけ離れていた。その後、私は父親とは正反対の男性に出会い結婚した。まさに両親は反面教師としての結婚モデルであった。

しかしそんな父親ではあったが、今も大切にしている父の言葉がある。

高校2年生の時、父が三人の娘を八畳の座敷に座らせて言った「今、お父さんの会社はあまりうまくいっていない。でも希望すれば、大学までは行かせてやる。これから先、どんな道に進むかは自由だが、結婚する、しないにかかわらず、自分の力で生活できるようにしなさい」という言葉である。

父の「自分の力で生きて行きなさい」という言葉は、その後の私の生き方に大きな影響を与えている。父は六四歳で亡くなったが、今、私が父との思い出をこの『本』に書かせていただき、さらに『パパのための娘トリセツ』を出版できたことを、父はきっと喜んでくれていると思う。