新型レクサスLS カー・オブ・ザ・イヤー“予選落ち”の衝撃

迷走するトヨタの高級ブランド戦略
山崎 明 プロフィール

迷走するブランドポジション

全体としてはスポーティ方向に舵を切ったように見えるレクサスだが、スポーティモデルの売れ行きは芳しくない。事実、今までスポーティなレクサスを代表してきたGSは、販売不振により新型の開発が中止となったようである。その代わりに、GSとサイズが近くカムリベースで居住性が高く安価なESをグローバル展開する方針としたようだ。これは明らかにブランド全体が向かおうとしている方向と逆行する動きに見える。

スポーティな高級車ブランドとしては確固たるブランドイメージを持っているBMWとアウディがあり、ポルシェも今や4ドアのSUVやセダンが販売の主力となっている。ドイツ車よりエモーショナルな高級ブランドとしてマセラティやアルファロメオ、ジャガーなども近年好調で販売を伸ばしている。その中でレクサスは明確な立ち位置を築けるのだろうか。

 

アメリカではレクサスは台数的には売れており、好調のように見える。しかし売れているのはES、RX、NXといった欧州勢に比べ割安感の高い車種が大部分となってしまっている(この3車種だけでレクサス全体の7割以上を占める)。その流れで2018年11月にはC-HRをベースとしたNXよりさらに小型のSUV、UXも登場させた。

全体を俯瞰すると高価なモデルで欧州プレミアム勢と対抗するのはあきらめ、割安なモデルで数だけを追う勝負にシフトしたようにも見える。Amazing(驚き)を標榜するブランドが示す方向性はちょっと奇をてらったスタイリング以外には感じられない。

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韓国の後塵を拝した現状

レクサスの品質の対する評価は依然として高いが、品質面では他ブランドが急速に改善し、アメリカの各種調査データではすでに多くのブランドがレクサスを凌いでいる。

とくに韓国勢の改善が著しく、JDパワー社の初期品質調査(2018年)では韓国ブランドが1-3位を独占しており(ヒュンダイの高級ブランドであるジェネシスが1位、キアが2位、ヒュンダイが3位。レクサスは8位)、商品魅力度を示すAPEAL調査でもジェネシスが1位でレクサスは10位に留まる(BMWは3位、メルセデスベンツは5位)。コンシューマーリポート誌もジェネシスをナンバーワンブランドに選定している。

今まで欧州勢に対して割安感で売っていたレクサスにとって韓国のジェネシスも無視できない存在となっているのだ。

このままでは近い将来高級プレミアム市場で韓国車の方が存在感がある、などという事態に陥りかねない。プレミアムブランドは見た目の販売台数より収益力とそれを支える独自のブランド価値が重要である。レクサスの強み弱みをはっきり見極め、立ち位置と提供価値を明確にし、真に価値あるプレミアムブランドとして早急に立て直すことが急務である。

はたして、レクサスはそのための戦略を描けるのであろうか。