「徴用工判決」問題がこれからの国際政治に与える意外な影響

日本はどう行動すべきか
佐藤 優 プロフィール

「中国・韓国・北朝鮮vs.日本」という未来

邦丸:韓国のいろんな人たちが、アメリカ合衆国にいる方々もそうですが、「韓国はこんなに辛い思いをしているんだ」というメッセージを発している。これが慰安婦問題でもジャブのように効いていて…。

佐藤:そのとおりです。それがもっと大きくなって、在米中国人、そして中国本国とも結びついてくるという形で、日本はものすごく追い込まれてくる。

そうすると、将来的には中国・北朝鮮・韓国が一体となって日本と対峙するようになる。日本の防衛線は現在、西側陣営の枠組みでいえば日米韓は軍事同盟国ですから、38度線なんですよ。それが対馬まで南下してくる可能性がある。

 

邦丸:北朝鮮と韓国が融和していく中で、かつてアメリカは「軍事的なオプションもあるよ」と脅しをかけていたのが、トランプ大統領になると「いやあ、金正恩はいいヤツだ」と言っている。すると、中国から見れば「朝鮮半島はすべてウチの影響下だ」となる…。

佐藤:こういう指摘をする人はあまりいないかもしれないですが、過去の歴史を見てみましょう。日本は朝鮮半島にある国家単体と戦争したことは基本的にないんです。たとえば元寇。元は船を持っていないですよね。あの船は高麗の船なんです。つまり朝鮮・中国連合軍だったわけ。

邦丸:はい。

佐藤:それから豊臣秀吉が朝鮮半島に侵攻したときも、本当の相手は明だった。明と朝鮮の連合軍と戦ったわけです。朝鮮半島の国との間で有事が起きるときは、必ず中国とパッケージだったというのが過去の歴史なんです。朝鮮戦争では、日本は掃海艇とかを送ってアメリカを後方支援したけれど、朝鮮半島には中国人民義勇軍が入ってきていた。つまり韓国対北朝鮮の戦いではなくて、西側対中国の戦いだった。

みなさんはまだあまり聞き慣れないと思いますが、これから「アチソンライン」とか「新アチソンライン」という言葉が出てくると思います。

邦丸:アチソンというのは人の名前ですね。

佐藤:ディーン・アチソンさんは、1950年当時のアメリカの国務長官、日本でいえば外務大臣です。その人が有名な「アチソン演説」というのをやった。「アメリカは共産主義陣営から自由主義陣営を防衛しなければいけない。その線をはっきりさせましょう。アリューシャン列島-日本列島-沖縄-フィリピン、この線より東を護ります」ということで、ここには朝鮮半島が入っていなかったんですね。金日成はそれを聞いて、スターリンと相談して「攻めて出ても大丈夫だな」と出てきたわけ。

邦丸:アメリカは出てこない、と。

佐藤:そうです。これがアチソンラインなのですが、今後、東アジアの防衛線はここに戻ってくるんじゃないか、という指摘があるんです。

私は「新アチソンライン」と言っています。どうしてかというと、アチソンラインには台湾が入っていなかった。現在では台湾は防衛線に入っていますから、かつてのアチソンラインと完全にイコールではなくて、台湾も防衛線に入れた「新アチソンライン」になる。だから、これから「アチソンライン」という言葉が新聞やテレビに出てくるようになると思います。

邦丸:今までは38度線だったのが、日本が最前線になっちゃうわけですね。こう言うと失礼かもしれないけれど、韓国という軍事的なクッションがなくなる。

佐藤:対馬が防衛線になります。拡大する中国、そこと連携していく北朝鮮・韓国と、日本が直接対峙するということになる。