繰り返されるのは、顧問教諭、保護者、そして管理者である学校幹部が、暴力や暴言で抑圧する指導を「間違っている」と腹の底から実感できていないからではないか。なおかつ、新たな指導スタイルに出会えずに揺らぐこのような指導者の足を、子どもへの暴力を容認する社会が引っ張ってしまう。

子どもを支援する公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が昨年、2万人の大人に対して実施した調査では、子育て中の親の約7割が体罰をした経験があり、全体の6割が「積極的にすべき」「必要に応じてすべき」「他に手段がないときにすべき」などと体罰を容認していた。

「理想的な指導者たち」のやり方とは

その一方で、理想的な活動をリードする顧問は確実に増えている。

静岡聖光学院高校ラグビー部はこの9月、同校主催で「部活動サミット」を開催した。顧問の佐々木陽平監督(41)によると、広島県立安芸南高校の取り組みを生徒だけで視察に行ったことがきっかけだったという。同校は、短時間で効率のいい練習に加え、部員が練習メニューや公式戦メンバーまで決めてしまうボトムアップ式で有名。この指導法を用いて前任の観音高校で全国高校総体を制した畑喜美夫監督(52)が顧問を務める。

「広島から帰ってきたら、自分たちで主体的に取り組む部活をもっと知りたい。学びたいと生徒が言い出して」(佐々木監督)クラウドファンディングで資金を募り、全国から6つの学校が集まった。

安芸南サッカー部が仲間の良いところを投稿し合う「いいねBOX」が紹介されるなど、個性的な取り組みが紹介された。スポーツ庁の鈴木大地長官も視察に訪れたという。

そのうえ、彼らの戦績も上々だ。

安芸南は全国高校選手権で激戦区の広島県予選8強進出を果たした。メンバー決めも交替も、PK戦にもつれ込んだときの蹴る順番も、すべて選手が自分たちで決めた

聖光学院は全国高校ラグビー選手権静岡県大会で、3年ぶり5度目の花園出場を決めた。決勝のハーフタイム。佐々木監督は円陣に加わらず、選手同士で話し合い、後半の戦術を決定し快勝した。どの学校もスポーツを楽しみながら、主体的に取り組むことで成果を上げている

花園出場を決めた県大会の決勝戦。戦術を決定した円陣の中に、佐々木監督はあえて加わらなかった 写真提供/静岡聖光学院ラグビー部

暴力や暴言、ハラスメント、圧迫指導に苦しむ生徒がいる一方で、それとは無縁な環境でのびのびと部活を楽しみながら成長する者もいる。

この「部活格差」の正体は、何か。

活動時間でも、施設でもない。顧問の指導スタイルによるものだ。

聖光学院や安芸南のように生徒の主体性を尊重した指導スタイルを、とれるか、とれないか。そのために学べるか、学べないか。格差を少しでも縮めるために、国は研修の場や学びの機会を提供することも必要であろう。

そして、部活動を選択する側にいる生徒や保護者も、強豪校であることや伝統、戦績のみに左右されず「中身を見る眼」を養うべきだろう。

県大会で優勝し、高成田主将を胴上げする静岡聖光学院ラグビー部の選手たち。優勝したからだけではない「楽しそう」な笑顔が印象的だ 写真提供/静岡聖光学院ラグビー部