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暴力が繰り返される学校と訣別できる学校との「部活格差」の正体

名古屋私立高校野球部の問題でもわかる
再び「部活」を舞台とした暴力が明らかになった。2012年に大阪の高校バスケットボール部で当時2年生のキャプテンが顧問の暴力や不当な扱いに苦しみ自死をした事件を機に、スポーツ界と教育界では「暴力根絶宣言」が出されたが、それでもなお悲しいニュースが続くのはなぜなのか。『桜宮高校体罰事件の真実』『部活があぶない』などの著書があり、スポーツ指導や教育の取材をし続けているライターの島沢優子さんは、そこには大きな「部活格差」があるという。
 

あの映像は決して「初めて」ではない

名古屋経済大高蔵高校(愛知県名古屋市)の野球部で、元プロ野球選手だった監督(47)が部員に暴力を振るっていたことが11月13日、明らかになった。連日テレビのニュースで体罰動画が流れているように、部員12人を殴る、蹴るなどし、3人に顔が腫れるなどのけがを負わせていた。学校に来たら携帯電話をいったん回収し下校時に返却するのが野球部の決まりだが、その回収率が低いことに腹を立てたという。

「(暴力をしているところの)動画を撮影されていたことを聞いた部員が、それを送ってほしいと頼んだ。撮影した人は送るのを躊躇したようですが(SNSで)送ったようですね。それを殴られた生徒の保護者が見て、学校に連絡をくださった。9日に起きてすぐのことです」

現代ビジネスの取材に応じた副校長は経緯を説明したが、顧問の過去の暴力は否定している。

しかしながら、部活動の現場で起きた暴力案件を担当している弁護士は「それは信じがたい」と首を振る。

「動画を見る限り、指導の現場で初めて暴力行為に及んだとは思えない。暴力はダメだと認識して指導してきたのであれば、ひとり目を殴った時点で、あ、まずいことをしてしまったと躊躇するはず。しかも、周りで見ている部員たちに驚いているふうではない。また始まった、というあきらめにも似た空気がある。あそこまでひどくなくても暴力や酷い暴言はあったのではないか」

同じ学校で以前も暴力が

実は同校では、2013年にサッカー部で顧問による体罰が発覚している。30代の男性教諭が3年生男子生徒に暴力をふるい、けがをさせ依願退職しているのだ。この教諭は11年にも体育の授業で忘れ物をした生徒の胸をつねったとして訓告処分を受けながら、その後もサッカー部員を平手打ちするなど暴力を続けていた。

2012年12月に大阪の市立高校バスケットボール部で当時2年生だった部員が顧問の暴力や理不尽な扱いを苦に自死。来月には七回忌を迎える。この事件を機にスポーツ界と教育界で「暴力根絶宣言」がされた。暴力根絶の機運は高まったものの、高蔵高校のように同じ学校で同じことが起きるケースは少なくない。

神奈川県の向上高校では今年、サッカー部の監督が部員への暴力でけん責処分を受けているが、昨年はラグビー部で当時の顧問教諭による暴力が発覚している。
一度起きた不祥事を、学校はなぜ教訓にできないのか。


2012年の悲しい事件でようやく、「指導の場で暴力は何があってもいけない」ということが公で宣言にされたことになる。桑田真澄氏など「暴力による指導に何一つ良いことがない」と主張し続けている人たちも多いが、それでもなお「多少の暴力は必要」という意識が多く残っているのだ Photo by iStock